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がん免疫療法にゲノム編集 臨床試験で機能確認 米大学

がん患者自身の免疫細胞を強化する療法「CAR―T細胞療法」に遺伝子を効率良く改変するゲノム編集技術を応用し、改変した免疫細胞が患者の体内で機能することを臨床試験で確認したと、米ペンシルベニア大の研究チームが6日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 臨床試験は昨年、進行した難治性のがん患者3人を対象に実施。骨髄腫の66歳と62歳の女性、腹部や腰に肉腫ができた66歳の男性で、この男性は一時、部分的に肉腫の縮小が見られた。3人とも数カ月後から進行して別の治療を受け、62歳の女性は死亡した。

 研究チームによると、さらに技術を改善して多くの患者で試験を行い、長期間観察して安全性と有効性を確認する必要がある。 

 血液の白血球のうち、T細胞は受容体たんぱく質でがん細胞にある「抗原」を識別して攻撃するが、通常は数が少なく、攻撃力も弱い。そこで遺伝子組み換え技術を使い、患者から採取したT細胞に「キメラ抗原受容体(CAR)」の遺伝子を導入して強化し、体外で増やしてから患者に戻す「CAR―T細胞療法」が開発され、治療に使われ始めている。

 同大チームはさらに強化するため、「クリスパー・キャス9」と呼ばれるゲノム編集技術を使い、T細胞の受容体をいったんなくした上で、がん細胞を識別して攻撃する能力が高い受容体を作らせる操作を行った。併せて免疫細胞にブレーキをかける受容体「PD―1」もなくし、「オプジーボ」のようなタイプの薬を使うのと同様の効果を狙った。

 CAR―T細胞療法には、副作用として体内に炎症を起こす「サイトカイン放出症候群」があるが、3人の患者では見られなかったという。