介護・医療関連ニュース

BMI30以上は腰痛発症率が2倍 股関節、膝の関節も…肥満は痛みの大敵だ!

森本昌宏「痛みの医学事典」

 古代では太った女性が崇拝されていたという。事実、各地で発見されるビ-ナス像は豊満な体形をしている。一般的な指標である体格指数BMI(Body Mass Index)では、25以上が肥満と判定されるが、1908年にオ-ストリアのビレンドルフで発掘されたビ-ナス像のBMIは30前後と推定された、とのことである。現代でも、南太平洋の島々では太っている女性が好まれ、フィジ-では、「また太ったね」がほめ言葉として使われているそうである。

BMI30以上は腰痛発症率が2倍 股関節、膝の関節も…肥満は痛みの大敵だ!

イメージ

太っていることとメタボは違う

 だがしかし、である。豊満とメタボは、ちょっと違う。少し難しくなるが、メタボリックシンドロ-ムとは「内臓脂肪蓄積とインスリン抵抗性を基本病態として、脂質代謝異常、高血圧、耐糖能異常が一個人に集積している状態」であり、心血管疾患(「狭心症」や「脳梗塞」)の原因となるものをさしている。“生活習慣病”(ひと昔前までは“成人病”と呼ばれていた病気)が複合したものと考えてよいだろう。つまり、ただ太っているだけでメタボリックシンドロームに当てはまるわけではないのだが、いまやメタボという言葉は、肥満と同義語のように用いられている。ただ太り気味だというだけで、“メタボ君”呼ばわりをされ、憤慨された方も少なくないだろう。

「命の回数券」も損なう

 とはいえ、メタボリックシンドロ-ムの中心となるのは、やはり肥満である。特に、皮下にではなく、内臓(腸間膜)に脂肪が蓄積した「内臓脂肪型肥満」(ウエストが男性では85cm、女性は90cm以上が目安)が問題となる。米国の「ワールドウォッチ研究所」が行った調査では、全世界の肥満人口は急増し、2000年には12億人に達している(他方、飢餓に苦しんでいる人口も12億人!)のである。肥満者の増加が最も深刻なのは米国で、成人の60%がBMI25以上であると報告されている。また、南太平洋に浮かぶ島、ナウル島での調査では、成人男性の80%、成人女性の78%がBMI30以上の肥満とされている。生活の急速な西欧化が原因と考えられている。

 肥満は様々な2次障害を引き起こすが、特に厄介なのは、先に述べた「狭心症」や「脳梗塞」など。さらに、「命の回数券」とも呼ばれる「テロメア」(染色体の末端に存在し、DNAの損傷を防いでいる構造物)が、肥満により短くなってしまうことも確認されているのだ。肥満、特に内臓脂肪の蓄積は、「睡眠時無呼吸症候群」を増悪することだって知られている。

 そして、肥満と痛みとの関係は……。結論から言うと、肥満は痛みの大敵である。

次ページは:人工膝関節置換術の70%以上が肥満の患者

1/2ページ