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認知症患者の歯科治療はできる時だけ少しずつ進めていく

【歯の疑問 ずばり解決!】(22)

【Q】94歳の母親が軽い認知症だと診断されました。歯医者さんで診察は受けてくれますか?

【A】もちろん受けられます。認知症は誰にでも発症する可能性のある身近なもので、特別な病気ではありません。僕の診療所に来られる患者さんの中にも何人かいらっしゃいますが、ミーティングでスタッフ全員に伝えて対応策を共有しています。

 2015年に国は「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を発表し、認知症の人の意思が尊重され、できる限り自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を掲げました。その中で、かかりつけ歯科医は来院患者の認知症の特徴に気づいて対応し、歯科治療を行うとともに家族を気遣い、支え、地域で見守るための連携体制を構築することが求められています。

 認知症の患者さんは基本的に感情の起伏が大きく、調子が悪いときは診療所全体に響くぐらい「ひいいいい、痛いーーー」と大きな声を出されたりします。

 付き添いの方に説明している間に外に出ていかれたときは、スタッフが裸足で全力で追いかけていました。

 前回の説明をほとんど覚えていませんし、同じ日に同じ話を4回話してくれた方もいらっしゃいましたが、いつも初めて聞いたように対応するのが大事だと思います。歯ブラシがしっかり使えていなくても、「前よりキレイに磨けてますね、その調子ですよ」といったように、否定的なことを言わないよう心がけています。

 治療も、その日その日で機嫌が変わるので、できる日には進め、できないときはできるところまで無理のないように進め、できたことを全力で褒めて……その繰り返しで少しずつ進めていきます。

 ただ、認知症の患者さんが歯科医院に通うのは家族に大きな負担がかかりますから、そんなときは生活されている地域の歯科医師会のホームページをチェックしてみてください。訪問歯科診療をしている歯科医師を探すことができます。

 とにかく最後まで笑顔で気持ちよく食事を楽しんで過ごしていただけるようにと、われわれ歯科医師も願っています。

(北沢伊/斉藤歯科医院院長 構成/小澤美佳)