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「誤嚥性肺炎」にならないための簡単体操 今から始めよう!70代まで働く健康術

【今から始めよう!70代まで働く健康術】

 70代の社会生活を脅かす病気はいろいろあるが、今回取り上げるのは誤嚥性肺炎。食べたものが気道に入って肺炎の原因となり、年間約3万8000人以上の命を奪い、死因第7位になっている(2018年「人口動態統計」)。しかも、厚生労働省の資料によれば、入院患者の誤嚥性肺炎の割合は、50代から増え始め75歳以上が約70%を占める。その原因のひとつは、「オーラルフレイル」だ。

 「足腰の筋肉が弱るように、口の周りの筋肉も低下していきます。活舌も悪くなり、噛む力も飲み込む力も低下すると、誤嚥性肺炎も起こしやすくなります」

 こう話すのは、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野の戸原玄(はるか)准教授。昨年12月、同大同研究科歯周病学分野の片桐さやか助教らとの共同研究で、「経口栄養が全身の健康に関わるメカニズムを解明」の論文を公表した。

 「オーラルフレイルは全身のフレイル(虚弱)や病気につながることが、近年の研究でわかってきました。健康のためにオーラルフレイル予防を意識し、改善していただきたいと思います」

 一般的に営業職で毎日いろいろな人と話をしていると、自然に口周りの筋肉は鍛えられるといわれる。食後のハミガキ習慣を持ち、歯周病退治などの口腔ケアも伴えば、オーラルフレイル予防は万全だ。一方、職場で話す機会が少なくプライベートでも無口という人は、口周りの筋肉が衰えやすいので注意が必要となる。

 「超音波検査で口周りの筋肉量を測ると、男性は女性よりもオーラルフレイルになっている人が多い。トレーニングのひとつとして『口開け体操』がお勧めです」

 方法は簡単。口を大きく開けて10秒キープし、口を閉じるだけ。5回を1セットとして、1日2セットすればよいそうだ。この体操を繰り返すと、食べ物が気道に入るのを防ぐ舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)が鍛えられる。つまり、誤嚥性肺炎も起こしにくくなるのだ。

 「前屈みの姿勢では、肋骨と肋骨の間にある『肋間筋(ろっかんきん)』が硬くなります。息を吸い込んで肺が膨らむためには、横隔膜だけでなく肋間筋の動きも必要で、肋間筋の柔軟性も重要となります」

 肋間筋の戸原氏お勧め体操が「シルベスター法」。

 〔1〕腕を前に組む(写真(1)左)、より簡単な方法では指を組んで腕を前に伸ばす。

 〔2〕ゆっくり息を吸いながら両腕を頭の上にあげる。

 〔3〕ゆっくり息を吐きながら腕を下ろす。〔1〕~〔3〕5回を1セット。1日2セット行う。

 「働いているうちから仕事以外の交流を深めておくことも大切です。高齢になっても、たくさんの人と話をして、活動的に過ごしていただきたいと思います」と戸原氏はアドバイスする。(安達純子)