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健康にもいい「旬」のものを食べよう 五感で知る“四季の豊かさ”(産経新聞)

長い冬も終わり、待ちに待った春がやってきた。そんな春を、目で、舌で、鼻で感じさせてくれる味がある。旬の食べ物を味わって、食卓から四季を感じ、季節の彩り豊かな日本に暮らす幸せを満喫したい。(櫛田寿宏)

 ◆やわらかい

 農畜産業振興機構需給業務課の戸田義久課長は「今は栽培技術と流通が発達し、どんな野菜でも旬が分からないほど一年を通じて食べられますが、春は野菜を通じて季節が感じられる時期です」と話す。

 春が旬の野菜として、戸田課長はキャベツ、タマネギ、サヤエンドウ、アスパラガス、菜の花を挙げる。キャベツは「春キャベツ」と呼ばれ、秋から冬にかけてのものは上下が平らなのに対し、形が丸く、葉が青々している。

 タマネギは「新タマネギ」と呼ばれ、夏や秋に収穫されるものとは区別される。夏や秋に収穫されるタマネギは、長く保存できるよう収穫後に乾燥機などで乾燥させる。このため、皮の部分がかたくなっているが、新タマネギは乾燥させずに出荷するので皮が薄くてみずみずしい。辛みが少ないのも特徴だ。

 シニア野菜ソムリエの田上有香さんは、「春キャベツはやわらかいので、普段なら捨ててしまう外葉や芯も食べられる。カロテンやビタミンCをたくさん摂取できます」と説明する。

 ◆シンプルな味付け

 調理する際は短時間で加熱するのがポイント。生でざく切りにして、塩とオリーブオイルであえるのが田上さんのお勧めの食べ方だ。「甘みがあるので、シンプルな味付けにするとおいしいです」と話す。

 新タマネギは水にさらす必要がなく、サラダやスライスオニオンにぴったり。ビタミンB群の吸収を促す硫化アリルを多く含むので、「豚のしょうが焼きやカツオの刺し身など、ビタミンB群を多く含むものに添えて一緒に食べるといいでしょう」。肉ジャガなどに使う際には、火が通りやすいので加熱時間を短めにするのがポイントだ。

 ◆健康にもいい

 海産物も春が旬のものは多い。その代表は、イワシ類の稚魚、シラスだろう。代表的な産地、静岡県では、3月21日に解禁となった。静岡県水産技術研究所は、カタクチイワシのシラスの漁獲量は昨年を下回るものの、マイワシのシラスは上回ると予想する。

 「釜揚げシラス」や「シラス干し」が一般的な食べ方だが、近年はそのまま刺し身のように食べる「生シラス」が人気だ。同県富士市の田子の浦漁協の関係者は「生が人気ですが、釜揚げはしっかり魚の味がしておいしい。違いを楽しんで」と話す。

 ただ、流通関係者によると、シラスはほとんどが冷凍で流通するため、都会では一部のスーパーでしか新物が扱われない。堪能したい場合は、産地に足を運ぶのが良さそうだ。

 「春が旬の魚はサワラ、アジ、マダイ、アマダイ、イワシです」というのは女子栄養大の西塔正孝准教授(水産学)。産卵期の前で、冬を過ごし脂がのっているという。アサリも栄養分を蓄え、身がぷっくりとしておいしくなる。

 西塔准教授は「魚の脂肪は高度不飽和脂肪酸で、体にいいものなので、良質のタンパク質と脂質が一緒に摂取できます」と太鼓判を押す。お勧めの食べ方は脂質が損なわれない刺し身だが、子供や魚が苦手な人は、イワシのつみれ汁など、汁物にすると脂質を汁とともに無駄なく摂取できる。

 西塔准教授は「旬の物はおいしくて健康にもいい。それに漁獲量も多いので価格も安い。意識して積極的に食べてもらいたいですね」と話している。