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「認知症になっても終わりではない。母はやっぱり母」認知症の母を撮影する日々
『ぼけますから、よろしくお願いします。』。そんなタイトルの「認知症」を題材としたドキュメンタリー映画が11月3日から公開されています。もともとテレビ番組として放送され、大きな反響を呼んだ本作。追加取材と再編集が行われ、劇場用映画として公開されました。
【画像】映画に登場する信友家の家族
監督は、北朝鮮拉致問題やネットカフェ難民などさまざまな社会問題に切り込んできたテレビディレクターの信友直子さん(56)。東京で40年近く暮らす信友さんが、広島で生きる95歳の父と87歳の母の「日常」をみつめます。認知症であることを突きつけられて苦悩する母。95歳にして初めて家事に挑戦する父。そして両親から離れて暮らす信友さん……。
娘として、テレビディレクターとして、信友さんはどのように両親と対峙したのでしょうか。認知症になっても「なんとかなる」と思える作品を
――両親を題材にしようと思ったきっかけを教えて下さい。
信友:2000年に自分のホームビデオを買ったんですね。いわゆる家庭用のホームビデオ。翌年の正月に帰省したときに、プライベートでなんとなく撮り始めました。最初は、お父さんが息子の運動会を撮るような感じでした。
――「老々介護」を中心に据えると、暗いテイストの作品になってもおかしくはありませんけど、そうなってはいませんね。
信友:両親も私も楽観的なので、あまりくよくよは考えなくて(笑)。それ以前に、私はシリアスで救いのないドキュメンタリーは作らないようにしています。救いがないと、視聴者の方も辛いですし。見た方が笑えて、家族や自分が認知症になっても「なんとかなる」と思えるような作品を目指していたので。
――本作のプロデューサー、大島新さんの「ディレクターとして両親に冷静な眼差しを向けている」という言葉が印象的でした。
信友:一歩引いてみたほうが、気が楽になるんですよ。まっすぐに向き合いすぎると、母の行動の一つひとつに左右されて疲れるし、あまり状況として良くはないんです。チャップリンの名言で、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」という言葉がありますね。それが本質だと思うんです。必死になると、鬱っぽくなるなと。ちょっと引いた視点で見ると、ちょっとぼけたおばあちゃんと、耳の遠いおじいちゃんの日常で、なんかかわいく見えてきたりもするんです。1/3ページ