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新人看護職員、離職防止や定着のカギは?-厚労省が研修事例集、認知症など出前講座も(医療介護CBニュース)
地域の実情に応じた看護職員研修を企画してもらおうと、厚生労働省は、研修の実施状況の調査を行い、認知症看護や感染管理などの認定看護師の「出前講座」や「病院派遣」といった研修モデルをまとめた事例集を作成した。新人看護師の離職防止研修やキャリア支援に加え、医療依存度の高い在宅療養者への看護能力育成も盛り込まれている。【新井哉】
■モチベーション向上で「オーダーメイド研修」
事例集では、へき地や中小病院などの「研修の実施が困難な施設への支援」と新人から中堅までの「離職防止・キャリアアップ」、「地域連携・人材交流」の3つのカテゴリーに焦点を当て、神奈川や京都、大分など8府県の取り組みを紹介している。
若手看護師の確保が課題となっている石川県の能登北部地域の事例では、地域の教育体制を重点的に支援し、資質の向上と定着の促進を支援することを「取り組みのポイント」として提示。その理由として、新卒の看護師の確保が困難となっている一方、50歳以上が全体の約4割を占めることを挙げ、「今後、より一層の看護師確保が必要」としている。
また、2007年度から能登北部地域の公立4病院に勤務しようとする学生を対象にした特別枠を設け、10年度からは修学資金の貸与額の増額などを図っていることに触れ、「今後、就学義務年限(2-4年程度)を終える看護師が順次生じることから、定着・離職防止対策が重要」と説明。こうした状況から、13年度から若手看護師のモチベーションを向上させるための「オーダーメイド研修」を行っている。
15年度は金沢大附属病院で7月と9月にそれぞれ4日間、希望の研修分野に応じた病棟に分かれて臨床実務研修を実施。例えば、整形外科領域の周手術期看護を学びたい場合、整形外科病棟や手術室で研修を受けられる。また、AHA(アメリカ心臓協会)の一次救命処置教育訓練プログラム「BLSヘルスケアプロバイダー」の資格取得研修も行われ、認定証が交付されるという。
■感染管理や摂食・嚥下障害、認定看護師が専門知識を伝授
看護協会と連携して中小病院を支援する「認定看護師出前講座」を実施している福井県の事例も取り上げている。同県は14年度から県看護協会に事業を委託し、認知症看護や感染管理、摂食・嚥下障害などの分野の認定看護師を中小病院に派遣。集合研修を行うことが困難な病院に勤務する看護職員でも、専門的な研修を受けることが可能になったとしている。
このほか、新人から中堅までの看護職員の離職防止やキャリアアップを目的にした神奈川県の取り組みも掲載。結婚や出産、子育てを経験した「先輩看護師」などを講師に招き、受講者に将来像のイメージ化を促し、就業継続への意欲を高めているという。
地域包括ケアシステムを中心とする在宅医療などの推進を踏まえ、“連携に強い看護師”を養成する京都府の事業も紹介。事業の運営拠点となった京都大医学部附属病院に昨年7月、「看護職キャリアパス支援センター」を設置し、急性期医療を担う病院と回復期リハビリテーションセンター、訪問看護ステーションなどとの間で、“在籍出向”による相互人事交流の支援を始めたという。
こうした各地の取り組みについて、厚労省は「研修を受けた質の高い看護職員の活躍によって、それぞれの課題の解決が期待できる」としている。