介護・医療関連ニュース
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要介護だけでの自立支援評価に警鐘-全国老施協、塩崎厚労相に意見書提出(医療介護CBニュース)
特別養護老人ホーム(特養)などの経営者らで組織する全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は5日、塩崎恭久厚生労働相に介護保険における自立支援の考え方に関する意見書を提出した。政府の未来投資会議で一部の有識者から、要介護度の改善を基準に介護サービスを評価しようとする意見が出ていることを踏まえたもの。意見書では要介護度の改善のみを評価の尺度とすることについて、「自然の摂理を無視し、生活の質を軽んずるものであり、介護保険制度の歴史に逆行する」と厳しく批判している。【ただ正芳】
先月10日の未来投資会議では一部の有識者が、2018年度の介護報酬改定において、利用者の要介護度を改善させた事業所にインセンティブを付与することや、自立支援の活動に取り組まない事業所には、減算やペナルティーなどのディスインセンティブを科す仕組みの導入を検討すべきとした。
この提案に対し、全国老施協の意見書では要介護度の改善だけを評価尺度とした場合、▽改善が難しい高齢者の受け入れに関する阻害要因となる▽利用者に望まぬ栄養摂取やリハビリテーションなどを課すことになる―などの問題が生じる可能性があると指摘。特に原則として中重度の要介護者を受け入れる特養では、利用者の要介護度が重度化するのは、「自然の摂理」とした。
さらに、ADL(日常生活動作)の改善は、QOL(生活の質)向上を実現するための手段であるにもかかわらず、要介護度の改善だけを評価尺度とした場合、「QOLの向上を伴わないADL回復の目的化」が促進されるリスクがあると指摘。その上で、疾病や障害などを持つ人が、その能力や状態像に応じて、その人らしい生活を送ることができる社会づくりを急ぐ必要があるとした。