介護・医療関連ニュース
-
入れ歯がゆるむのはなぜ? 体重は栄養管理に必要な情報…デイサービスでの測定は役に立つ
食べること 生きること~歯医者と地域と食支援 五島朋幸
ケアマネジャーの笠原君の紹介で訪問診療に行くことになった田畑博夫さん(仮名、82歳)。ちょっと古いアパートの1階に夫婦二人で住んでいます。1年ほど前に依頼があった時は、入れ歯の調子が悪く調整に来ました。その時は数回の調整で調子が良くなり、そのまま終了となっていました。そして再び笠原君からの連絡。入れ歯の調子も悪いけど、最近、食事がしにくくなっているようだから食べる機能に関しても見てほしいとのことでした。
田畑さんのアパートの場所はうろ覚えでしたが、近くまで行くと記憶がよみがえってきて無事に到着。アパートの呼び鈴を鳴らすと奥様の芳恵さん(仮名、76歳)がドアを開けてくれました。体調不良は入れ歯が合わないせい?
「まぁ先生、お久しぶりです。またお世話になります」
「こんにちは。ご無沙汰しております。またよろしくお願いいたします」と言って玄関を上がると、すぐにダイニングキッチンになっていて、その椅子に博夫さんが腰かけていました。
「田畑さん、ご無沙汰しています。どうですか、体調は」と言うと、元気なく右手を上げるだけでした。芳恵さんが、「最近あまり声も出さないのよ。食べる量も減っているし。まぁ、入れ歯のせいもあると思うのよね。先生、またお願いしますね」
「そうなんですか。食べるときにむせたりしないですか?」
「そういうのはないんだけど、食欲がないみたいなの。すぐ『いらない』って言うし」
「そうですか。じゃあ入れ歯から調子を見ますね」
田畑さんは上下総入れ歯。とても扱い方が良く清潔に維持されていました。前回は上の入れ歯と歯茎の間に隙間ができていたようで、そこをうめる修理をしました。今回も上の入れ歯が落ちてくるようなので、確認すると、昨年以上にゆるみが出ていて、手を添えていないと落ちてしまうまでになっていました。体重が減るから入れ歯がゆるむ
「これで、どうやって食べていたんですか」と聞くと芳恵さんが、「食べる前に接着剤を付けるのよ。ベタベタするから食後は外しちゃうんだけど」
「じゃあ、大分体重が減ったんじゃないですか」
「そうねぇ」
僕は入れ歯の修理を始めました。20分ほどで完成し、「どうですか、ゆるくないですか? 痛みも確認してくださいね」と声をかけました。博夫さんは口をもぐもぐさせて、「大丈夫」。
「じゃあ、これで使ってみてください。また見に来ますから」と言って道具を片付けながら、「体重は量られていますか?」と尋ねると、デイサービスで毎月量っているそうです。「いつごろから痩せられたんでしょう」と尋ねると、デイサービスの記録表を棚から取り出して、「先月は49キロ、その前の月が50キロ、その前が……」と一生懸命に調べてくれます。やはり体重が減ってきているようです。1/2ページ