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長寿のための3カ条は野菜、運動、助け合い|大便革命 腐敗から発酵へ
理想の大便は、理想の腸から。
うんち一筋45年の「うんち博士」、辨野(べんの)先生(本名です!)による幻冬舎新書『大便革命』から、腸内環境から見た長寿の秘訣をお届けします。
私が『大便革命』を執筆するきっかけとなったのは、「健康長寿者の腸には、ある種の腸内細菌が非常に多い」という、近年の研究で最大の発見でした。本書の第1章でご紹介しているとおり、これは日本国内でほかと比べて健康長寿者が飛び抜けて多い地域を訪れ、そこに暮らす人たちに大便を提供してもらい調べた結果、ようやくわかったことです。
私が訪ねた“長寿の村”や“長寿の島”は、山梨県・棡原(現・上野原市)、群馬県・南牧村、鹿児島県の奄美大島や徳之島、沖縄県・南大東島、大分県・姫島村、島根県・知夫里島(隠岐諸島)などですが、そこには90歳や100歳を超えても病気や寝たきりにならず、元気いっぱいに暮らしている方がたくさんいらっしゃいました。
これらの地域の人々に共通していることとして、次の3つが挙げられます。
・野菜をたくさん食べている
肉や魚をあまり食べず、野菜(根菜類、豆類、キノコ類など)をたくさん食べている。また、海藻類もたくさん食べている地域が多い。
・体をよく動かしている
山間部にあって毎日坂道の上り下りを繰り返し、野菜作りで全身を使うなど毎日、体を動かす生活をしている。とくに足腰が鍛えられている。
・お互いに助け合っている
住民同士、とくに高齢者同士の交流がさかんでお互いに助け合っている。
なぜこのような習慣が腸内環境によいのでしょう。
一つ目の「根菜類、豆類、キノコ類など食物繊維が豊富な野菜と海藻をたくさん食べている」は、食物繊維が良好な腸内環境づくりの鍵となることを示しています。
二つ目の「体をよく動かしている」こと、とくに足腰が鍛えられていることも、大腸の健康にとって重要な意味を持っています。高齢になると便を押し出す力が弱くなり便通が悪くなる人が多いのですが、下半身の筋肉が鍛えられていると便通もスムーズで、腸内環境を良好に保てるのです。
三つ目の「お互いに助け合っている」ことも重要です。これらの健康長寿地域では、お年寄りが明るく暮らしており、加齢にともなう脆弱さがありません。健康長寿地域に住んでいる元気なお年寄りの大便サンプルを調べると、私が「長寿菌」と名付けた腸内細菌の割合が40~60%以上を占めています。
ヒトの腸内細菌は、腸の粘膜層をびっしりと埋めつくすようにして住み着いており、その様子が顕微鏡で覗くとお花畑(フローラ)のように見えることから、「腸内フローラ」という美しい名がつけられています。腸内細菌のバランスが改善されて素晴らしい腸内フローラにすることができれば、さまざまな病気を排除するだけでなく健康増進につながることもわかってきました。
ただし、この腸内フローラは、年齢とともに変化していきます。離乳食を摂り始める前、母乳やミルクを飲んでいる頃の赤ちゃんの腸内細菌は、ビフィズス菌が60~90%を占めていますが、離乳食を摂り始めると成人と同様の腸内フローラへと変化します。
20代でビフィズス菌が22~25%、悪玉菌のクロストリジウムが10~12%ほどになり、さらに50代の頃に大きな変化が訪れます。この年齢になるとビフィズス菌の割合が5~8%に激減する一方、悪玉菌のクロストリジウムはほとんど減らないため、放っておけば悪玉菌のほうが優位になってしまうのです。
中高年以後の方が体内の「長寿菌」を増やすには、“長寿の村”や“長寿の島”の人たちの食事や生活習慣を見習うことがなによりも肝腎です。* * *
「長寿菌」についてもっと詳しく知りたい方は、幻冬舎新書『大便革命』をお求めください。
■辨野義己
1948年大阪府生まれ。国立研究開発法人理化学研究所科技ハブ産連本部辨野特別研究室特別招聘研究員。農学博士。専門領域は腸内環境学、微生物分類学。酪農学園大学獣医学科卒。東京農工大学大学院を経て、2009年より現職。DNA解析により腸内細菌を多数発見。腸内細菌と病気の関係を掘り下げて研究し、文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門・2009年)ほか数々の学会賞を受賞。ビフィズス菌・乳酸菌の高い健康効果を訴える「うんち博士」としてテレビ、雑誌などのマスコミに広く取り上げられており、講演活動も多い。『自力で腸を強くする30の法則』(宝島社)、『腸内細菌の驚愕パワーとしくみ』(C&R研究所)、『100歳まで元気な人は何を食べているか?』(三笠書房)など著書多数。