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91歳認知症女性、薬を減らしたら徘徊トラブルがなくなった

一夜で徘徊がなくなった

 現在、日本には約500万人の認知症患者がいる。アルツハイマー型の場合、治療によって治すことは不可能と言われている。しかし薬が原因で認知症が進行した場合、その薬をやめることで、症状が劇的に改善する可能性があることをご存じだろうか。

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 『クローズアップ現代+』に出演した、前出の医師・吉田病院の平田氏が解説する。

 「向精神薬や抗不安薬は、飲み続けていると認知機能が下がり、ぼうっとする時間が長くなったり、物忘れがはげしくなったりします。

 また抗コリン剤は認知機能を低下させる薬としてよく知られていますが、最近注目されているのは神経障害性疼痛を抑えるために使われるリリカという薬です。これらを常用した結果、認知症を発症してしまうことがあります。

 しかしこうした患者の場合、薬をやめることで認知機能障害が見られなくなることがあるのです」

 そういって平田氏が紹介するのは、80代の男性患者のケースだ。腎不全で倒れて病院に運ばれてきたこの男性は、腎不全だけでなくパーキンソン症状、認知症も同時に患っていた。

 「検査をした結果、神経痛を抑えるために常用しているリリカの副作用によって腎機能の低下が起こっていることが分かりました。まず、リリカの服用をやめたところ、2週間程度で腎機能が回復し透析から離脱できました。

 それだけでなく、1ヵ月後にはパーキンソン症状も劇的に消え、認知機能まで大きく改善したのです。リリカの副作用によって認知症の症状が悪化していた、ということです」

 『クローズアップ現代+』では、ある有料老人ホームで、薬を減らすことで認知症を防ぐ、症状を改善するプロジェクトが紹介されていた。

 認知症を患う91歳の女性は、薬を減らすことで症状が改善。わずか2ヵ月で徘徊などのトラブルがなくなり、会話を楽しむまでに回復していたが、平田氏によると、こうした認知症患者は決して少なくないという。

 「薬が原因で認知症になる場合、アルツハイマー型認知症と比べて、進行が劇的に早いのが特徴です。アルツハイマー型の認知症だと、数年かけて少しずつ症状が悪化していきますが、薬が原因の場合、数週間、早ければ数日で症状が悪化します。

 親の認知機能低下があまりにも早く進んでいるなと思った場合、薬剤性による認知症を疑い、医師と相談のうえで薬を減らしてみることも検討するべきです」

 これまで認知症患者には、徘徊や大声で叫ぶなどの症状が出た場合、それらを抑えるために別の薬が投入されることが多かった。しかし、認知症の症状を抑えるためには、むしろ薬をやめるほうがいいのではないかと見直されるようになってきた、ということだ。

 たかせクリニック院長の髙瀬義昌氏も、こう指摘する。

 「認知症の対応はことのほか難しく、患者に認知症の症状が現れた場合に、抗認知症薬などを反射的に処方する医師もいます。しかし、それらには副作用もあり、かえってその方の生活に悪影響を及ぼすこともあります。

 薬を減らしてみる選択を考えることは大切です。私の患者さんでも、薬を減らした結果、何年も続いていた徘徊が一夜にして消えたケースがありました」

 一方で、薬の副作用で一時的に認知能力の低下が起こっているのを医師が「認知症」と誤診してしまうケースもあるという。前出の平田氏が続ける。

 「80代の男性で、物忘れが激しくなったため病院で見てもらったところ認知症だと診断され、以来、認知症の薬を飲んでいる方がいました。

 ところがその薬を含め複数の薬を飲むようになって以降、どうにも体調がすぐれないということで、ご家族の方につれられて、私のところに診察に来たんです」

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