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知られざる「副作用」の恐怖~薬が5種類以上になると命の保証は…

副作用が連鎖する

 「歳をとれば病気になるのが普通ですが、症状に合わせて薬を飲むと、薬は増える一方です。しかし、薬の種類が増えれば、それだけ副作用も増えて苦しむことになる。これでは、本末転倒でしょう」

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 こう語るのは前出の山口氏だ。山口氏は番組の元になった研究「高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用」の分担研究者の一人でもある。

 東京大学の秋下教授が主導したこの研究では、高齢者は、処方される薬が6種類以上になると副作用が起きる人が増えると明らかになった。

 そもそも、ひとつひとつの薬にはそれぞれ副作用がある。といっても、必ず副作用が現れるわけではなく、適切な時間で身体の外に薬が出ていけば、副作用は起こらない。

 何種類もの薬を一度に飲めば、薬が体内に長く留まり、それぞれの薬の副作用がでやすくなることは知られていた。高齢社会のいま、この多剤併用、ポリファーマシーは社会問題化している。

 今回、その境目が、6種類だと判明したのだ。

 高齢者は副作用が重篤化しやすい。排尿障害、腎機能障害など重い副作用がいくつも出れば、単なる副作用の足し算ではなく、掛け算的に、悲惨な状況に追い込まれる。

 処方された薬が5種類を超えて、6種類になると何が起こるのか。その答えは、大きく4つある。

 【①副作用が増強される】

 都内在住の遠藤陽太さん(79歳・仮名)が語る。

 「以前から、不眠症で、デパス(エチゾラム)とハルシオン(トリアゾラム)という睡眠薬を、気分で使い分けていました。ほかに飲んでいたのは、気管支炎の薬でクラリスというものです」

 昨年8月、遠藤さんは深夜にトイレに行こうとした際、転倒して階段から落ちた。泊まりに来ていた長男が物音に気付き、救急車を呼んで一命をとりとめたという。遠藤さんは続ける。

 「睡眠剤の副作用でめまいが起きることがあるとは聞いていましたが、これまではそんなこともなかったのです」

 なぜ突然、めまいが現れたのか。その原因こそ、「副作用の掛け算」だ。

 「薬は、体内にある代謝酵素によって、身体の外に出て行きます。しかし、遠藤さんの飲んでいたクラリスにはこの代謝酵素の動きを妨げる効果がある。そのため睡眠薬が体内に残り、副作用が強まったと考えることができます」(薬剤師・宇多川久美子氏)

 さらに、遠藤さんは実は、これ以外に8種類の薬を飲んでいた。

 これも、薬が体内に残り、強い副作用を引き起こす原因になった。

 「歳をとると、肝臓で薬を分解したり、腎臓で薬を排泄する機能も衰える。たくさん薬を飲めば、身体の中に薬が留まる時間が長くなり、副作用が強く出る可能性が高くなります」(宇多川氏)

 つまり、特定の薬の掛け算に加え、6種類以上の薬を飲んでいることそのものが、命を縮めるリスクになったのだ。

 【②副作用が連鎖する】

 薬の副作用が次々に現れ、命の危機につながることもある。

 髙山孝典さん(71歳・仮名)の次男、隆夫さん(45歳・仮名)が語る。

 「父は血が固まって詰まらないよう、一日1回、ワーファリンという薬を飲んでいたようです。今年の3月、がんの手術をして、術後の痛みを和らげるため鎮痛剤(リリカ)も処方されていました」

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