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感覚神経がつながれば認知障害は治る! 「痛み」が脳に伝わらないことが原因 MCIリバーター・軽度認知障害回復奮闘記
【MCIリバーター 軽度認知障害回復奮闘記】
筑波大学附属病院の認知力アップデイケアに通い始めて1週間目のことだった。トレーナーの本山輝幸さんが椅子に座って右足を水平より高く上げるように言った。足を伸ばしゆっくり何度か上下させた後で、「足を上げたときに太腿が痛くありませんでしたか」と聞く。痛みはまったく感じなかった。
「これぐらいならほとんど痛くありません」
僕が少し自慢げに言うと、本山さんの顔つきが変わった。
「痛くないということは感覚神経が脳につながっていないからです。山本さんはやはりMCIですね。でも心配ありません。筋肉に強い刺激を与えて集中してトレーニングすれば3カ月くらいで感覚神経はつながります」
最初は?。言われたことの意味が分からなかった。長年、認知症予防のトレーニング指導に携わっている本山さんは断言した。
「これまでに1万人以上の人を指導しましたが、トレーニングで感覚神経がつながった人はほぼ全員、認知症の症状が改善されました」
本山さんは神奈川県のボディービルチャンピオンになったこともあるムキムキマン。ちょびひげにパンチパーマ。
僕は最初、「そんなにすぐ改善するなら認知症がこれほどの社会問題になるはずはない。まさか言葉巧みな詐欺師では」と疑ったほどだ。本山さんが言うには認知症の人が何十キロもさまようのは、痛みが脳に伝わらないからだという。
本山式筋トレでは道具を使わない。「鍛えるべき筋肉に自分の神経を集中する。脳と体の感覚神経のネットワークを構築するように心がける。鍛えている際に筋肉の痛みや刺激を感じられるようになったら感覚神経がつながってきた証拠です」と言われた。
だが、簡単なようで難しい。足とお尻、背中、胸と上腕、腹筋に背筋などゆっくりと動かしてみる。1つの動きはそれぞれ1分ほど。休みを入れながらトレーニングするのだが、20分もすると汗が吹き出してくる。
とにかく継続を目標に「本山式」を続けた。3カ月くらいたったころか、鍛えている足に痛みが走った。次は半年後、お尻の筋肉と胸に痛みを感じるようになった。人によって異なるそうだが、まだ感覚神経がつながっていないのか僕は脛の筋肉だけが痛くならない。
「いちばん筋肉の量が大きい太腿筋をつなげれば問題はありません」
痛みを感じるようになってどんな変化があったのか。まずは認知機能テストの結果が良くなった。本山さんが神奈川県で調査した結果でも大きな改善傾向が見られたというが、僕も全身的に快調になった。今まで霞がかかったようだった脳がスッキリ晴れたように。
■山本朋史(やまもと・ともふみ) 1952年生まれ。週刊朝日編集委員などを経て現在はフリー。2014年軽度認知障害と診断され早期治療に励む。著書に『悪党と政治屋 追跡KSD事件』『認知症がとまった ボケてたまるか実体験ルポ』など。