介護・医療関連ニュース
-
メタボが引き金!? 「非アルコール性脂肪肝」に“相互悪化”の恐怖
【今から始めよう!70代まで働く健康術】 暴飲暴食が2型糖尿病の誘因となるのは周知のこと。一方で、非アルコール性脂肪肝にもなりやすい。非アルコール性脂肪肝は、飲酒習慣がなく、肝臓に中性脂肪が30%以上たまった状態である。 「2型糖尿病と非アルコール性脂肪肝は、手を取り合って相互に悪化します。いずれも誤った食習慣が原因で、今世紀に入り、どちらの患者さんも増えているので注意していただきたい」 こう話すのは、高橋医院(東京都中央区)の高橋友乃院長。東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科の兼任准教授で、糖尿病と非アルコール性脂肪肝などの研究を長年行い、相互関係に詳しい。 2型糖尿病と診断された約6割の人に、非アルコール性脂肪肝が合併しているとの報告があるという。さらに、2型糖尿病の人は、そうでない人と比べて、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のリスクも高まる。NASHは、肝臓に脂肪がたまった状態が続いた後に、肝臓で炎症が続くようになり、組織が変性することで肝硬変へとつながる。同時に、肝がんのリスクも上昇。 「2型糖尿病の人の2割弱は、肝臓の病気で亡くなっています。2型糖尿病は、目の網膜、神経、腎臓などの合併症が有名ですが、同時に肝臓を守ことも意識しましょう」 反対に、食べ過ぎなどで非アルコール性脂肪肝と診断された人の2割以上は、2型糖尿病をはじめ、空腹時の高血糖や耐糖能異常(空腹時血糖値が正常値と異常値の間にある境界型)が見られるという。非アルコール性脂肪肝と診断された後に、2型糖尿病を発症する割合も3・5倍に上るそうだ。2型糖尿病と非アルコール性脂肪肝の関係は別項を参考にしてほしい。 「非アルコール性脂肪肝は、30~60代の男性の3割以上に及びます。2型糖尿病はもとより、高血圧や肥満など、メタボリックシンドローム(肥満+2型糖尿病、高血圧、脂質異常症いずれか2つ以上合併)の発症頻度も高くなります」 非アルコール性脂肪肝を侮ってはいけない。BMI(ボディマス指数=体重kg÷身長m2乗)が25未満で肥満領域でなくても、たった2~3キロ体重が増えただけで脂肪肝になりうる。すでに肥満領域に達している人や、メタボの人は、非アルコール性脂肪肝を同時に抱え、相互悪化の悪循環に突入している可能性が高い。メタボでの心筋梗塞や脳卒中といった心血管病の発症リスクはもとより、肝がんのリスクも上がるのでご用心。 「肝臓についた脂肪は、運動で減らしやすいのでぜひ取り組んでいただきたいと思います。80キロの人が4キロ痩せるだけでも、非アルコール性脂肪肝も2型糖尿病も劇的によくなります」 その方法は次回紹介する。 (安達純子) ◇ ■2型糖尿病と非アルコール性脂肪肝の相互関係 (1)2型糖尿病になると、高血糖の余分な糖質が中性脂肪として肝臓にたまり、非アルコール性脂肪肝になる (2)非アルコール性脂肪肝になると肝臓に炎症が生じ、インスリンが効かないインスリン抵抗性を促進する (3)インスリン抵抗性が続くと、膵臓はインスリン分泌量を増やさなければならず、結果として疲弊し糖尿病が悪化する (4)糖尿病が悪化することで、さらに肝臓に中性脂肪がたまりやすくなる (5)肝臓の炎症も激しくなって非アルコール性肝炎のリスクが高まる