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脳卒中後の「誤嚥性肺炎」対策と「なる前」の予防体操 70代まで働く健康術
【今から始めよう!70代まで働く健康術】
誤嚥性肺炎を防ぐには、オーラルフレイル予防が大切なことは前回紹介した。一方で、脳卒中後の後遺症で誤嚥性肺炎になる人もいる。誤嚥性肺炎の約60%を占めるだけに、対策は欠かせない。
「脳卒中などで入院し、チューブで鼻から胃へ直接栄養を入れる経鼻栄養法の後、口から食べられるようになって誤嚥性肺炎になる方はいます。しかし、口から食べられるようになると元気になる方が多い。摂食嚥下(えんげ)リハビリのタイミングの見極めが問題だと思います」
こう話すのは東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野の戸原玄(はるか)准教授。2005年、同大歯学部附属病院摂食嚥下リハビリテーション外来を開設し、訪問診療などで数多くの摂食嚥下障害の患者を指導している。
「どのタイミングで直接口から食べられるように訓練するか。それは専門家でないと判断は難しいと思います」
脳卒中では、発症直後には急性病院へ入院し、後遺症がある場合は回復期病院へ転院。リハビリ指導などを受けて自宅へ戻るのが一般的だ。回復期リハビリでも、摂食嚥下リハビリも行われている。しかし、回復期リハビリで調子が戻らない場合は、摂食嚥下リハビリに至らず、経鼻栄養の状態で退院するケースもある。
退院後に元気になっても、リハビリを受けずにスタッフがいない状態では、口から食べると誤嚥性肺炎のリスクがアップする。経鼻栄養法以外にも、腹部に穴を開けて胃に直接栄養を送る胃ろうなども同様だ。
「自宅で元気になったけれども、自分の口で食べられない。そういった方を数多く診ています。胃ろうでも摂食嚥下リハビリによって食べられるようになれば、患者さんは元気になります」
戸原氏は、「なぜ口から食べると元気になるのか」という疑問を解くため、同大同研究科歯周病学分野の片桐さやか助教らとの共同研究で、経口栄養が全身の健康に関わるメカニズムを解明した。また、高齢者の摂食嚥下・栄養に関する地域包括的ケアについての研究のため、「摂食嚥下関連医療資源マップ」(www.swallowing.link/)を作成している。一般の人も、医療機関の検索が可能だ。
「健康に役立つメカニズムがわかったことで、口から食べることに積極的な医師が増えてくれればと思います」
脳卒中後の誤嚥性肺炎予防や、摂食嚥下リハビリは重要だが、そうならないためにはどうすればよいか。
前回、口を大きく開けるなど、オーラルフレイル対策は紹介した。他に取り組むべきことはないだろうか。
「いくつになっても元気に過ごすには、人体の筋肉で最も大きな太ももの筋肉の柔軟性を保つとよいでしょう。私がお勧めしているのはハムストリングのストレッチです」
(1)イスに足を乗せて、太ももの後ろの筋肉を伸ばすことを意識する。
(2)片方の足が終わったらもう片方の足も。1日に無理のない範囲で何回も行うとよいそうだ。
「余裕のある方は、スクワットも加えると効果的です」
日頃から食生活を正し、足腰を鍛えて病気予防に励み、いざ脳卒中になっても摂食嚥下リハビリで活力を取り戻す。その心構えが大切だ。(安達純子)