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基礎疾患と重症化リスク がん・糖尿病・高血圧患者ら予備軍は「6000万人」以上
【感染症専門医に聞く「新型コロナウイルス」対策】
新型コロナウイルス感染症が世界的に広がる中、これまでの中国の感染者データによって、重症化しやすい人の傾向がわかってきた。高齢者、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、心筋梗塞・狭心症、がんなどの基礎疾患を持つ人は、重症化のリスクが高い。
長年感染制御に尽力してきた国立がん研究センター中央病院感染症部の岩田敏部長は、「新型コロナウイルスで重症化しやすい人は、インフルエンザなど他の感染症でも重症化のリスクが高い方々です。マスクの着用や手洗い、人混みを避けるなど感染対策をより徹底していただきたい」と話す。
新型コロナウイルス感染症は、発熱、喉の痛み、咳、倦怠感が4日以上続き、重症化する場合は、呼吸困難などに陥り肺炎を併発する。
致死率は中国国内では2・6%、中国以外は0・4%といわれていたが、日本でも大流行して重症化の人が増えれば、亡くなる人がさらに増える可能性もある。なにしろ超高齢化社会で、国内の糖尿病患者は予備軍も含めて約2000万人、高血圧患者は約4000万人、がんになる人は年間100万人以上。日本は重症化しやすい人が山ほどいることになるからだ。
「国が行う感染対策では、重症化する人をいかに増やさないかが重要になります。今がその正念場。がんの患者さんは、薬による治療で免疫力が低下しているため感染症に注意が必要です。また糖尿病の人も、高血糖が続くと免疫機能が低下し、感染症が悪化しやすい。糖尿病や高血圧は、日頃からコントロールしておくことが重要です」
基礎疾患を持つ人にとって悩ましいのは、テレワークなどで外出を避けようと思っても、通院で病院へ行かなければならない場合だろう。薬をあらかじめ多めに処方してもらえればよいが、注射などを受ける必要があれば、病院へ行くために外出せざるをえない。
「当院(国立がん研究センター中央病院)では、来院される方は症状の有無に関わらず、みなさんにマスクの着用と手指衛生の励行をお願いしています。また、入院患者さんへの面会は原則として禁止。発熱や咳などの症状のある方は、事前にお申し出が必要です。このように病院の体制は整えていますが、今後、さらに流行が拡がった場合には、対応も変えていく必要があると思っています」
現状、同病院への通院は従来通りに行えるようになっているそうだ。だが、大流行した場合は、感染者とそうでない患者の分離、重症化患者の転院など、対応が変わってくる可能性もあるという。重症化を防ぐには、リスクの高い人が感染者と接触する機会を減らすことが大切だ。それは、家庭内でも共通する。
「インフルエンザのときもそうですが、家族に感染者が出たときには、なるべく他の同居者とは別のひとつの部屋にとどまって休ませてください。重症化しやすい人のお世話をする人は1人に決めるようにしましょう」
重症化のリスクを把握し、薬などで高血圧や糖尿病は数値をコントロールして、外出時も家庭内でも感染予防を常に意識しておこう。(安達純子)
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■重症化しやすい人の注意点
□マスク着用、手洗いを励行、人混みは避ける
□がん患者は薬で免疫力が低下しているので要注意
□糖尿病、高血圧の人は日頃から症状をコントロール
□家族に感染者が出たら、別の部屋で過ごしてもらう
□重症化しやすい人の世話は1人に決める