介護・医療関連ニュース
-
増える中高年の「根元むし歯」 歯周病で歯肉がやせ…お酒も悪影響
大人の健康を考える「大人び」
口の健康について、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きます。(聞き手・佐々木栄)
「むし歯の洪水の時代」といわれた1970年代、子どもの9割以上に永久歯のむし歯がありました。ところが2016年の調査によると、むし歯の子は2割にも満たず、驚くほど減っています。
でも、日本人全体でみると減ったわけではありません。実は、高校卒業後にむし歯になる人は増えているのです。むし歯のない人は25~29歳で11%、35~39歳ではわずか0・5%。つまり、発症年齢が遅くなっただけで、高齢者のむし歯も増えています。スポーツ飲料、お酒も助長
ある68歳の男性は、1年ほど前から、つまようじが歯の根元に引っかかるようになりました。歯医者へ行くと、歯の根元にむし歯があるとの診断。あいた穴に詰め物をしました。歯科医からは「これ以上むし歯を増やさないよう、しっかり歯磨きを」と念押しされました。
高齢者は歯が残っていても、多くは歯周病によって歯肉がやせています。歯の根元は固いエナメル質で覆われておらず、歯肉の位置が下がるとむし歯になりやすいのです。根元の詰め物は外れやすく、歯が折れる原因にもなります。
近年、むし歯は砂糖だけでなく、ブドウ糖や果糖、でんぷんでも起こりやすいことが分かってきました。炭酸ジュースやスポーツ飲料、お酒も歯を溶かして根元のむし歯を助長します。
心臓病や高血圧などの病気で、唾液の分泌が減ってしまう副作用のある薬を飲んでいる人は要注意。唾液の減少は、根元のむし歯の原因になります。むし歯は今や、子どもの病気ではなく、中高年の病気なのです。天野敦雄(あまの あつお)
大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。