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眼球摘出まで至った…生活習慣病がもたらす「目の怖い病気」
目の病気は誰だって怖いもの。年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。
目に来る動脈は「左右1本ずつ」、つまるとマズい
目の病気はさまざまな全身の病気と関連しておきることがあります。とくに網膜に栄養や酸素をおくる血管がつまるなどのトラブルは、糖尿病や動脈硬化など生活習慣病と密接に関係しています。
なぜ生活習慣病があると目の血管にとってリスクが高くなるのかというと、それは目に栄養や酸素を送る大きな動脈が、左右それぞれ1本ずつしかきていないことと関係があります。もし脳のようにそれぞれ4本の動脈・静脈がきていれば、どれか1本がつまっても当座はなんとかなる確率が高いのです。しかし目は左右それぞれ1本しか動脈がないので、それがつまるとたいへんなことになります。
目の血管のトラブルには増殖糖尿病網膜症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心静脈分枝閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心動脈分枝閉塞症など、怖そうな名前のついた病気が並びますが、この病名に中心静脈、中心動脈という名前がついているのは、それぞれが1本しかないことからきています。
このうちとくに網膜中心動脈閉塞症はダメージが大きいことで知られています。一本しかない目の動脈の大元である網膜中心動脈が飛来した血栓で閉塞し血流が遮断されるのですから、症状は急激におきます。
完全閉塞では網膜の視細胞や視神経に酸素がまったく送られなくなるので、網膜が虚血に耐えられる2時間を越えると失明します。マッサージをする、目の水を抜いて眼圧を下げるなど、詰まった血栓を流す方法がないわけではありませんが、閉塞してから2時間以内の早期にこれを行うことはかなり難しいのです。
◆生活習慣病が目の血管をつまらせる
こうした目の動脈をつまらせるような病気がおきたとき、さらに重要なことは、目の動脈をつまらせた原因を特定することです。網膜中心動脈閉塞を起こすのは、異常な事態であり、血栓の飛来源に思いをめぐらせる必要があります。
不整脈があり心臓で血液が固まりやすくなり血栓ができるとか、プラークと呼ばれる頸動脈の動脈硬化性隆起に血栓ができるなどして、これら血栓が網膜中心動脈に飛来して詰まらせることがあります。同じ血栓が脳へ行くと脳梗塞になります。
このように、網膜中心動脈閉塞が起きたときは、命にもかかわる問題が潜んでいることが多いのです。そういった全身の問題を精査する機会を提案し、その結果、命を長らえるとともに、症状がおきていないもう一方の目を救うことを考えるというのが眼科医の正しい判断だと私は考えています。
目の中の動脈や静脈がつまるのは心臓病や高脂血症など生活習慣病が背景にあると考えられます。動脈閉塞症はもちろん静脈閉塞症など、血管がつまっておこる目の病気がある場合は、全身を検索し、その原因を治療することが重要なのです。1/2ページ