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大腸がん<5>切除不能進行再発の抗がん剤治療は5段構え【ガイドライン変遷と「がん治療」】

【ガイドライン変遷と「がん治療」】大腸がん(5)

 ステージⅢ以下で、手術と術後補助化学療法などを行ったにもかかわらず、再発してしまうことがあります。ちなみに用語に関して、最初から大腸以外の臓器にも腫瘍が認められる場合は「転移(肝転移、肺転移など)」と言っています。一方で、肉眼で確認できる限りの腫瘍を切除したにもかかわらず、どこかの臓器(大腸とは限りません)に腫瘍が出現してきた場合は「再発」と言います。肝臓に出現すれば肝再発、肺なら肺再発といった具合です。

 ガイドライン(2019年)では、再発臓器が1つだけで、手術が可能な状態であれば「積極的に切除を考慮する」と書かれています。また2カ所以上でも可能であれば「切除を考慮してもよい」となっています。特に肝・肺再発に関しては、ステージⅣの肝・肺転移と同様、切除を(弱く)推奨しています。

 さらに切除不能と判断された転移や再発についても、「全身薬物療法(抗がん剤治療のこと)が奏功して根治切除が可能になる症例が存在する」として、その場合は手術を(弱く)推奨しています。大腸がん患者に複数回の手術経験者が多いのは、そういう背景があるからでしょう。

 その抗がん剤治療(切除不能進行再発大腸がんに対する薬物療法)ですが、術後補助化学療法と比べて使える薬と処方がかなり多いですし、治療ガイドラインが更新されるたびに増え続けています。新薬が続々と承認されているのと、既存薬のより効果的な組み合わせ(併用療法)の開発が進んでいるためです。

 初版(05年)には、FOLFOX療法、FOLFIRI療法、5―FU/LV療法など5種類の処方が載っていました。しかし当時は1次治療、2次治療といった概念がなく、使う順番については書かれていませんでした。

 それが最新版(19年)では、1次治療だけでも13処方ありますし、何と5次治療まで整備されているのです。20世紀のうちは、大腸がんの抗がん剤治療は効果が少なく副作用ばかり強いとして、厳しい批判にさらされていました。もちろん今でも副作用は大きな課題として残されていますが、腫瘍縮小効果や、とりわけ余命延長が大きく改善されつつあるのは確かです。

(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)