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「見えにくい」状態を放置すると認知力が低下する!?

「私は学生時代に本を読むのが大の苦手で、1冊を読みきることさえ大変でした。しかも、頭痛と肩コリに悩まされ、頭痛薬と湿布が欠かせなかったのです。でも、メガネをかけたところ、いつのまにか頭痛・肩コリが治まり、本を読むスピードが上がりました。小説を読む楽しさに目覚めたのです」

そう語るのは、梶田眼科院長の梶田雅義さん。梶田先生が頭痛・肩コリとメガネの関係に着目したのは約30年前。裸眼で過ごしていた遠視の人にメガネを処方したところ、「頭痛と肩コリが治った!」と報告されたのがきっかけだった。その後も、患者さんから同様の報告が寄せられ、遠視だった梶田先生自身もメガネをかけることにしたそう。

「もしも頭痛・肩コリに悩んでいたり、本を読むのがおっくうに感じられたら、それはピントが合っていないせいかもしれません。遠視の人にとっても、近視の人にとっても、自分の目に合うメガネやコンタクトレンズが、人生の質を高めてくれるということを知ってほしいと思います」(梶田先生)

■「見えにくくなった」のを放置すると知的好奇心も薄れ、認知力の低下を招く恐れが!

ピントが合わず、ぼんやりとしか見えない状態を放置すると、脳が映像処理をしなくなり、物を見ること自体をあきらめてしまう。認知症の検査で、目で見た物の形がわからなくなるというのは、脳の反応が鈍くなり、認知力が低下している表れなのだ。

「特に自分の視力を過信して、メガネをかけたがらない遠視の人は要注意。手元が見えにくいと、脳が見ることをあきらめ、知的好奇心を低下させます。また、対面で話すときに相手の顔がぼやけるため、目を合わせて会話することがつらくなってしまうのです。もしも、おしゃべりな人が急に静かになったら、認知症の兆候かもしれません」

“ピントが合わず、相手の顔が見えにくい”状態は、人とのコミュニケーションに影響を及ぼし、人生の楽しみを半減させる。高齢になっても生き生きと過ごせるように、自分に合うメガネやコンタクトレンズで、“近くも遠くも”快適に見える環境を整えよう。そのためには40代、50代になって「見えづらさ」を感じたら、なるべく早く眼科医に相談することも大切だ。

イラスト/かくたりかこ 取材・原文/大石久恵