介護・医療関連ニュース

「土曜朝の起きる時間」を変えるだけで認知症予防に?

ここ10年ほどで「人生100年時代」という言葉は、よく耳にする言葉となった。あるレポートでは、8割が「知っている」と回答したほどだ。高齢化が進み、リタイアした後の人生も多様化したことで、長い人生を健康に過ごすことは多くの人の関心事であり、課題にもなっている。

 2019年10月、そうした「人生100年時代」に関して注目のデータが発表された。飲料メーカーのサントリーが、健康寿命延伸への貢献を目指して飲料やサービスを開発する「100年ライフプロジェクト」の一環で行った健康意識調査「ウェルビーイングトレンドサーベイ2019」では、「将来気をつけたい、もしくは予防したい病気」で、「認知症」が1位になったことがわかった。2017年には、将来の不安は「がん」が1位で、「認知症」は2位だったのに対し、2019年は初めて「認知症」が「がん」を抜いたのだ。

「土曜朝の起きる時間」を変えるだけで認知症予防に?

全国2700人の男女を対象にしたサントリー100年ライフ プロジェクト「ウェルビーイングトレンドサーベイ2019」より

予防したい病気1位の「認知症」、だが対策は不十分

 日本人の多くが命を落とす「がん」ではなく、「認知症」が1位となった背景には、「100年という長い期間を、健康に過ごしたい」という現在のライフスタイルが反映されているのだろう。今や人生100年時代はある種のキーワードとなり、リタイアした後の暮らし方に関する記事は、世の中にあふれている。

 多くの人にとって関心事である「認知症」。しかし、同レポートでは、健康対策をとれていない理由についても調査している。「継続するのに手間(37.1%)」「時間が取れない(36.0%)」などの回答が続き、対策が実際には十分とれていないことが浮き彫りになった。さらに、若い層ほど予防の意識が高く、75%以上の人が無理なく続けられる健康対策を望んでいるという結果もわかった。

「土曜朝の起きる時間」を変えるだけで認知症予防に?

予防医学研究者の石川善樹氏

認知症予防のかぎは「土曜の朝」?

 日本人が一番気になる病気「認知症」にならないためにはどうしたらよいのか。予防医学研究者であり、企業や組織の健康づくりを支援する株式会社Campus for H共同創業者の石川善樹氏によると、「認知症のリスク因子には生活習慣病があり、生活習慣を整えるには“睡眠”が鍵となる」という。

 睡眠不足は身体活動の不足や食生活の乱れを生み、それらが間接的に生活習慣病に繋がると石川氏は指摘する。生活習慣の改善は一見難しいことに思えるが、実はそれを整えるのは、「土曜日も平日と同じ時間に起きること」だとした。よく平日に休めなかった分を、休日にゆっくり過ごすことで解消したいと「寝だめ」する人がいるが、実は起きる時間を遅くすることで、体内で時差が生じていると認識する「社会的時差ボケ」を生んでいるという。

 石川氏いわく、その結果、月曜日も調子が悪く、それは水曜日まで影響するなど数日に及ぶ。これらを解消するには、食事の時間帯や分量、就寝時間など、いわゆる「キーストーン・ハビット(要の習慣)」を知り、変えることで、意外にもあっさりとできるという。

「土曜日の朝、いつもと同じ時間に起きるだけで生活習慣が整い、規則正しい生活をすることができます。そうすることで認知症の不安を少しでもなくすことができるでしょう」と、石川氏は提唱した。

 人生100年を生きるには、特別なことをするのではなく、日常生活で見落としがちな「規則正しい生活」に鍵があるようだ。皆さんもやってみては。