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「逆流性食道炎」 30年前と比べて罹患率10倍の“国民病”
定年後はジムで汗を流すことを日課にしている65歳のA氏はトレーニング中、心臓に痛みを覚えた。健康には自信を持っていたA氏だが、狭心症や心筋梗塞ではないかと慌てて病院に駆け込んだ。
「総合病院の循環器科で検査を受けたのですが、なぜか消化器科の受診を指示された。下された病名は『逆流性食道炎』。心臓の病気とばかり思っていたので驚きました」(A氏)
地元で詩吟サークルを主宰するB氏(72歳)も戸惑いながら話す。
「軽い咳が続いたり、朝、喉がかれていることがたびたびあった。風邪だと思って呼吸器内科のクリニックにかかったところ、逆流性食道炎によるものではないかといわれたんです」
この病気に詳しい国立国際医療研究センター国府台病院の上村直実名誉院長が解説する。
「逆流性食道炎の典型的な症状は、胸やけや吐き気、ゲップのほか、酸っぱい液体が口に上がってくる呑酸が挙げられます。さらに、肺や心臓に痛みを感じたり、喘息のような咳が続くこともある。また、声がかれる、喉がヒリヒリするなどの違和感や、中耳炎や蓄膿症などの症状が現われることもあるなど、症状は多岐にわたります」
消化器の病気でありながら、耳鼻咽喉科や循環器科、呼吸器科まで及ぶ幅広い症状を引き起こす。胃酸の成分に塩酸が含まれ、強酸性であるためだ。常に胃酸にさらされる胃は特殊な粘膜によって保護されているが、食道や喉、口など周辺の器官は長期にわたって胃酸にさらされると、粘膜がただれるなどの変化を起こしてしまう。
上村医師によれば、最近は診療科の垣根を越え、多くの医師が逆流性食道炎を知るようになった。そのため、他科から逆流性食道炎の疑いのある患者の紹介を受けることが増えたという。
「30年前に比べ罹患率は10倍になり、まだ診断を受けていない潜在層を含めると患者数は1500万人になると推定されている。すでに“国民病”ともいえる状況です」(上村医師)
◆ピロリ菌との関係
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