介護・医療関連ニュース

「タンパク尿・血尿」は腎臓病のサイン! 早急に検査、原因特定を 「腎不全」から身を守れ

【「腎不全」から身を守れ】

 メタボリックシンドロームが、腎機能低下を加速させ、ひいては「腎不全」の引き金になり得ることを紹介してきた。健康診断の尿検査で「タンパク尿」が出た場合、メタボ改善はもとより、腎臓の状態を腎臓内科で調べてもらうことがなにより大切になる。

 「『タンパク尿』が生じるのは、腎臓の糸球体の病気が原因のことが多い。なぜ『タンパク尿』になったのか、原因を調べて適切な対処をすることが腎臓を守ることにつながります」

 こう話すのは、筑波大学附属病院副病院長で、腎泌尿器内科診療グループ長の山縣邦弘教授。厚生労働省研究班の代表を務めるなど、慢性腎臓病の診断・治療・研究に尽力する。

 腎臓の病気の代表格は「糸球体腎炎」。急性糸球体腎炎は、風邪などの細菌の感染を機に腎臓での炎症が一気に広がる。風邪のような症状に伴ってむくみや高血圧などの症状が伴うことが多く、尿検査や血液検査で腎機能の異常はすぐに判明するのが一般的。

 このような症状のあるものに比べ、圧倒的に多いのが「慢性糸球体腎炎」。いろいろな病態があるが、3~4割を占めるIgA腎症は無症状のことが多く、健康診断の「タンパク尿・血尿」が発見の決め手となる。

 「IgA腎症は、ステロイドパルス療法などさまざまな治療法が開発されています。タンパク尿が消失し、腎不全を防ぐことが可能になり、この病気による人工透析患者さんは年々減っています。一方、糖尿病の血糖を下げる治療薬も新たに開発され、治療が進展しているにも関わらず、『糖尿病性腎症』で人工透析治療になる方はなかなか減りません。それが問題です」

 健診で「タンパク尿」が出たら、まずは何が原因かを突き止めることが肝心。生活習慣による2型糖尿病が原因なら、高血糖を改善・管理することが腎臓を守ることにつながる。同時に高血圧を認める場合も多く、適切な血圧管理が必要となる。

 腎臓の悪化を未然に防ぐチャンスがあるのに、予備群も含め2000万人ともいわれる糖尿病患者のうち、医療機関を訪れるのは300万人を超える程度。未受診の放置されている糖尿病患者が多いのも問題だ。

 「2型糖尿病の治療薬のひとつSGLT2阻害薬は、タンパク尿を減らして腎臓を守り、心筋梗塞などの血管病を予防することも示唆されています。食生活の見直しと同時に薬を適切に使用することが、腎臓を守るためにも重要なのです」

 2型糖尿病は、血糖値をコントロールするインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性や、インスリンの分泌量が減ることで高血糖状態が続く。SGLT2阻害薬は、ナトリウムやブドウ糖の尿細管からの再取り込みを抑制し、尿中にブドウ糖を排泄(はいせつ)することで高血糖を改善する薬として、2014年に保険適用された。簡単に言えば、血中のブドウ糖を尿と一緒に出す上、利尿作用が働いて腎機能をサポートする作用もあるようなのだ。

 「薬を適切に服用しつつ、食べ過ぎを止める。そして適切な運動-たとえば、1日8000歩から1万歩の歩行を心掛けていただきたいと思います。高齢になって腎機能が落ちた状態では心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まります。将来の健康のために、メタボを改善して健康を維持しましょう」と、山縣教授は「動けるうち」の対策を呼びかける。(安達純子)

 ■あなどれない健康診断の「尿検査」

 □健康診断でタンパク尿が出たら必ず腎臓内科で原因を突き止める

 □生活習慣による2型糖尿病が原因なら高血糖を改善・管理せよ

 □糖尿病患者と予備群2000万人のうち受診は300万人程度。放置はダメ!

 □2型糖尿病治療薬SGLT2阻害薬は腎臓を守り心筋梗塞など予防も

 □投薬・食べ過ぎ阻止・適切な運動によるメタボ改善が腎臓を救う!