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高齢者の定義、75歳以上に引き上げを-老年学会などが提言(医療介護CBニュース)

日本老年学会と日本老年医学会は5日、一般的に65歳以上とされている高齢者の定義を見直し、75歳以上に引き上げるべきとする合同提言を発表した。65-74歳は「准高齢者」と位置付け、仕事やボランティア活動といった多様な社会参加を促すことで、高齢化のイメージを改め、明るく活力のある超高齢社会につなげたいとしている。【敦賀陽平】

 両学会は2013年に合同の検討ワーキンググループ(WG)を立ち上げ、従来の高齢者の定義の妥当性について議論を重ねた。検証の結果、近年、高齢者の慢性疾患の発症率は低下する一方、運動能力や認知機能などは上昇していることが分かった。また、内閣府の意識調査では、70歳以上を「高齢者」と考える人が多数を占める結果となっている。

 15年夏には、両学会が「現在の高齢者は10-20年前に比べて5-10歳は若返っている」とする声明を発表。今後の超高齢社会を活力あるものにするため、高齢者が就労やボランティア活動などに参加できる社会をつくる必要性を指摘していた。

 日本老年医学会の楽木宏実理事長は5日の記者会見で、「より現実に合った形で、新しい未来を切り開いていくために大事なことは何なのか。国民とアカデミア、行政が一緒に考えていくことが大事だ。この提言がそのきっかけになればいいと思っている」と述べた。

 また、国立長寿医療研究センターの鳥羽研二理事長は、「多くの要介護高齢者は75歳以上。支えられる側の年代の意識は、高齢者をひとくくりにする考え方では既に合わなくなってきている」とし、高齢者の定義を見直す意義を強調した。

 提言では、准高齢者を「高齢者までの準備期間」と位置付けた上で、就労を強制することなどがないよう、多様性のある社会参加を促している。楽木理事長は、「従来、高齢者と呼ばれてきた人たちが、また活動性の高い集団の中に入る。日本の成功体験の一つとして世界に発信していきたい」と語った。

■社会保障政策、「ネガティブな方向」に懸念
 WGで座長を務めた日本老年医学会の大内尉義前理事長は、今回の提言は「あくまで医学、医療の立場」とし、今後の社会保障政策への影響について、「年金受給年齢の引き上げなど、ネガティブな方向に動いてほしくないというのが、学会としてのスタンスだ」と述べた。