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人工透析を回避させるために「LDL吸着療法」で血液を浄化 血中の悪玉コレステロールを除去
人工透析が必要となる原因疾患で最も多い「糖尿病性腎症」。その透析導入を遅らせたり、回避させる「LDL吸着療法」という治療法が一部の医療機関で行われている。
LDL吸着療法は「家族性高コレステロール血症」や「閉塞性動脈硬化症」、「巣状(そうじょう)糸球体硬化症」では保険適用になっている。糖尿病性腎症に対しては2015年に先進医療に認められたが、現在は患者の登録は終了し、有効性を検証するデータをまとめている最中だ。
どんな治療を行うのか。これまで糖尿病性腎症の患者42人にLDL吸着療法を実施した新松戸中央総合病院(千葉県松戸市)の中村司副院長が説明する。
「LDL吸着療法は、血液浄化療法の一種です。血液浄化療法とは、体外循環によって血中から病気の原因となる因子や細胞を除去する治療法です。LDL吸着療法は血中の低密度リポタンパク(LDL)、いわゆる『悪玉コレステロール』を除去するのです」
尿タンパクを伴う糖尿病性腎症では、高コレステロール血症の合併が多く、悪玉コレステロールが腎臓の糸球体に沈着して腎障害を引き起こす。通常、尿タンパクを伴いむくみが生じる状態(ネフローゼ症候群)の治療では、ステロイド剤を使うが、血糖が上昇するので糖尿病患者には使えない。そのため免疫抑制剤などが使われるが、腎臓への負担などから症状の改善が難しいのだ。
LDL吸着療法が検討される糖尿病性腎症は、中等度以上の尿タンパクを伴い、薬物療法を行っても悪玉コレステロール値が改善しない症例だ。
「LDL吸着療法は単にLDLを除去するだけでなく、血管の炎症を抑える、酸化ストレスを抑制する、血液をサラサラにする、動脈硬化の改善など、多面的な効果が報告されています。それにネフローゼ症候群を伴う糖尿病性腎症には心不全の合併が多いので、生命予後が延びることも分かっています」
具体的には入院して行う。患者の頚部かソケイ部(太ももの付け根)にカテーテル(細い管)を留置して、専用の機器で1分間に100cc前後の速さで血液を取り出し、血球成分と血漿(けっしょう)成分を分離した後、血漿成分に含まれるLDLを吸着・除去して、きれいになった血液を再び体内に戻す。1回にかかる時間は2~3時間。医療機関によって異なるが糖尿病性腎症の場合、これを週2回、5週間にわたり10回行うという。
「改善度は個人差が大きいですが、むくみはほとんどなくなります。尿タンパクが10分の1、LDLが半分に減る場合もあります。ただし、半数の患者さんは2~3年のうちに再び進行します。効く患者さんでは、透析が避けられる可能性は大いにあると思います」
早く保険適用になることを期待したい。(新井貴)