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血管作れないマウス、iPS注入で正常に 受精卵で成功

血管や血液を作れないようにしたマウスの受精卵に、別のマウスから作ったiPS細胞を入れたところ、血管や血液があるマウスに成長させることに成功した、と東京大のチームが発表した。チームは、拒絶反応を起こしにくい移植用の臓器や血管、血液を作る研究に役立つと期待している。論文は21日、米科学誌ステムセルリポーツに掲載される。

 東京大医科学研究所の中内啓光特任教授や山口智之特任准教授、浜仲早苗特任研究員らのチームは、血管や血液を作る遺伝子を持たないマウスの受精卵に、別のマウス由来のiPS細胞を入れた。iPS細胞は体内で血管や血液などに成長し、血管や血液がある大人のマウスに育った。iPS細胞に入れた緑色に光るたんぱく質により、iPS細胞由来の血管だと区別できた。腫瘍(しゅよう)などの異常は見られなかった。万能細胞のES細胞でも同様に確認できた。

 これまで、血管や血液が作れないマウスの受精卵はまもなく死んでしまっていた。

 中内さんらは、ヒトに移植するための臓器をブタなどの動物の体内で作る研究を続けている。血管や血液などに動物の細胞が混ざると、移植時に拒絶反応が起きるおそれがあった。今回の成果は、移植を受ける側の細胞をもとにしたiPS細胞を使い、血管や血液を作る可能性を示した。チームは「拒絶反応を起こしにくい臓器づくりに貢献できる」と期待している。(戸田政考)