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胃がん死者数5年連続で減少 注目される「ピロリ菌除菌治療」 バリウムは廃止の動き
日本人の胃がんによる死者数が減っている。肺、大腸と並ぶ3大がんだが、死者数の減少傾向が5年続き、医療関係者からは「画期的だ」という声もあがっている。胃がんの原因となる菌の除菌治療が、保険適用で普及したことが一因とみられる。胃がんのリスクを見極める検査を導入する自治体も増えており、減少傾向がさらに続くことが期待されている。
5年で死者数1割減
胃がんは、日本人最多のがんだ。年間に新たに胃がんと診断された患者数は、13万1893人。大腸がんの13万1389人、肺がんの11万1837人を上回る(いずれも国立がん研究センターの平成25年の統計)。
しかし、胃がんによる年間の死者数は4万5531人。これは、大腸がんの5万99人、肺がんの7万3838人より少ないのだ(いずれも同センターの28年の統計)。
一貫して増加傾向が続く大腸がんや28年に初めて減少に転じた肺がんに対し、胃がんは23年以降減り続け、28年までの5年でおよそ1割減となった。
この胃がんの死者数の減少傾向について「画期的です。保険適用の拡大で、ピロリ菌除菌治療を受ける人が増えた成果と思われる」と話すのは、ピロリ菌研究の第一人者でもある北海道医療大の浅香正博(あさか・まさひろ)学長だ。
胃がんについては、世界保健機関(WHO)の専門組織「国際がん研究機関(IARC)」が2014年、「胃がん対策はピロリ菌除菌治療を中心とすべき」とする報告書をまとめている。IARCによると、胃がんの8割はピロリ菌感染が原因で、除菌によって発症は3~4割減る。
日本は平成25(2013)年、それまでの胃・十二指腸潰瘍に加え、慢性胃炎にもピロリ菌除菌治療の保険適用を拡大。その結果、除菌治療を受ける人が増えた。除菌が必要か調べる際の内視鏡検査で早期胃がんが発見される頻度が増す効果もあり、相乗効果的に死者数の減少につながったというのが、浅香学長の見立てだ。