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歯磨きを1日に5回はする できれば自分の歯で…しっかり噛めば記憶力向上! MCIリバーター・軽度認知障害回復奮闘記

 【MCIリバーター 軽度認知障害回復奮闘記】

 歯の手入れも認知症予防に有効、と専門書を読んで知ったのもMCI(軽度認知障害)と診断された直後だった。僕は東京・四谷にあるかかりつけの歯科医院に行き、MCIと診断されたことも告白したうえで認知症と歯の関係について質問した。

 「よく噛んで食べることは健康の源。歯を大切にする人は認知症になりにくいと聞いたことがあります。認知症予防ということであれば、いっそうのケアが大切。歯周病対策のためにも定期的に検診をしましょう」

 僕に入れ歯はない。治療済みの歯は2、3本あるが28本すべて自分の歯だ。その上で「いっそうのケアを」との助言だった。

 3カ月に1回の定期検診のほか、歯磨きもそれまでの毎朝晩の2回に加え、毎日5、6回は必ずするようにした。カバンには携帯用歯ブラシセットを入れている。

 起床してすぐに1回、朝食を食べて2度目。昼食後に3度目。取材で人に会う場合はその前に4度目を。そして夕食後に5度目、就寝前に6度目。そうこうするうちに効果が表れ歯周ポケットが格段に良くなった、と担当歯科医がほめてくれたのである。

 認知症と口腔(こうくう)ケアについて長く研究をしている東京都健康長寿医療センターの平野浩彦・専門副部長に取材したことがある。

 「咀嚼(そしゃく)をすると脳の血液量が上昇する。しっかり噛むと集中力を高めて記憶機能を向上させることは分かっています」という。アルツハイマー病の場合、記憶障害や空間認知機能低下などを起こして歯の磨き方や入れ歯の使い方を忘れてしまう人も多いそうだ。

 そうなる前に歯の健康に心を配るべきだろう。歯の手入れはもちろん、ガムを噛むことにもある程度の効果があるという。“記憶障害に効果”とうたうイチョウの葉エキスの入ったガムを妻が買ってくるので時々噛んでいる。

 普段の食事もよく噛んでゆっくり食べるようなった。脳の刺激になるのであれば、とパクリ一口ごとに10回は噛む。男3人兄弟の中で育った。小さい頃から早く食べないと取られてしまうという厳しい生存競争があった。長じて就職先は忙しい記者職。早飯は必須の技能、飲み込むように食べていた癖を改め矯正するのはかなり大変だった。

 友人らと外食などをしたときも食後、トイレに行くといって携帯歯磨きセットで歯を磨くことが多い。ただ、この時、焦ってしまうのか歯磨きクリームを上着やズボンに付けてしまうことが何度か。しかも、それにすぐに気付かないまま人に会ったりして、「何かついていますよ」と注意されたことも。注意しなければ。最近は歯を磨いた後、歯磨きクリームを吐き出さずに飲み込んだりして防いでいる。

 ■山本朋史(やまもと・ともふみ) 1952年生まれ。週刊朝日編集委員などを経て現在はフリー。2014年軽度認知障害と診断され早期治療に励む。著書に『悪党と政治屋 追跡KSD事件』『認知症がとまった ボケてたまるか実体験ルポ』など。