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認知症では…と思ったらどうする? まずはかかりつけ医や地域包括支援センターに相談を

【「心の老い」は克服できるか】

 高齢者医療の現場では、本人も家族もどうすればいいのかわからず、迷います。「もしも」のとき、どうすればいいのか。医師でジャーナリストの富家孝氏が、精神科医の吉竹弘行氏に聞く。

 --私は病気の相談を受けたとき、「なにごとも早期発見が大事」と言っていますが、精神科でも同じですか?

 「そうですね。ほかの病気、とくにがんと同様に、認知症も老人性うつも早期発見・早期治療は重要です」

 「家族も本人もなにか変だと思っても、精神疾患を認めるのはつらい。しかし、その間に病状は進んでしまいます。欧米と違って日本では医者にすぐかかれます。ともかく、変だと思ったら、かかりつけ医に、かりつけ医がいない場合や地域包括支援センターに相談すべきです」

 --地域包括支援センターとは?

 「高齢者の生活に関わる総合相談窓口です。もちろん、私のところのような精神科のクリニックに直接来てもらってもかまいません」

 --よく聞くのは、何科に行けばいいのですか? ということ。「心療内科」から「認知症外来」「物忘れ外来」など、多種多様です

 「ここ10年ほどで一気に増えたと思います。20年前は認知症を中心に診る医療機関はあまりなかった。今は都会ならどこの駅にも精神科があり、大病院なら専門科目がいくつも置かれています」

 --精神科と心療内科の違いは?

 「たいていの患者さんは近所のかかりつけの医者(内科)に行きます。明らかなうつ、記憶障害などの症状がある場合は別として、身体的な症状があるケースが多いからです。だるさ、吐き気、動悸、下痢、腹痛などです。しかし、検査しても異常がないとなると心理的要因が疑われ、心療内科を紹介されます。精神科、精神内科、精神神経科でも、最近は同じです。昔から、認知症を専門にやってきたのは精神科、とくに精神神経科でしたが、いまは関連科目の医者も積極的にかかわっています」

 --認知症や老人性うつの患者数が年々増えるにつれ、クリニックも増えていますね

 「精神科の現場から言うと、精神科医は診る範囲が広く、たとえば、認知症はもとより、うつ病、躁うつ病、統合失調症から、アルコール依存症、薬物依存症、睡眠障害などまで扱います。で、認知症の専門医と言うと、まだまだ足りていません。だから、ほかの科目からも参入しているわけです」

 --厳密に言えば、心療内科は内科医ですね

 「内科医が心身症などを専門にすれば、心療内科になるわけですが、その逆で精神科医でも、最近は受診者を集めるために心療内科の看板を掲げるところもあります。精神疾患を“心の病気”と言う時代ですから」

 --いまはどの病院もインターネットやスマホでチェックしてから来院するのが当たり前に

 「ただ、ネット情報もいい加減で、なんでも診られるように書いているところもありますよ」

 --結局、認知症や老人性うつを疑ったら精神科ということですか

 「そうですね。認知症の認定などに関しては専門ですから。ただ、認知症というのは精神科医だけで治療できるものではありません、アルツハイマー型、レビー小体型では、脳細胞の萎縮がありますので、神経内科がしっかり診立ててくれると、治療方針が立てやすくなります。血管型の場合は、脳腫瘍やクモ膜下出血、脳梗塞が主な起因ですから、脳神経外科医の協力が必要です」

 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『ブラック病院』(イースト・プレス)ほか著書計67冊。