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口腔内の炎症が一因…歯周病と認知症は大きく関係している
【歯の疑問 ずばり解決!】#34
【Q】歯周病とアルツハイマー病は関連があると説明されましたが、本当なのでしょうか
【A】本当です。認知症とは、いったん発達した知的機能が低下して社会生活や職業生活に支障をきたす状態を指しています。脳血管障害など、原因疾患によりさまざまな型に分類されていて、アルツハイマー型認知症もそのひとつです。
最近では歯周病がアルツハイマー型認知症の発症および進行に関連しうることが示唆されていて、歯周病にかかっているマウスを使った研究データも出ています。
歯周病になると、歯周病細菌の出す内毒素により炎症が起きて、血液中に炎症性物質である「サイトカイン」が生じます。サイトカインとは生理活性タンパク質といわれるもので、血液中に流れ込んで脳に運ばれると「アミロイドβ(Aβ)」というタンパク質が脳の中で増えていきます。そのアミロイドβは記憶をつかさどる海馬に集中して増え続け、徐々に脳細胞を死滅させていくのです。これが歯周病によってアルツハイマー型認知症が引き起こされるメカニズムといわれています。
当院にもアルツハイマー型認知症で通われている60代の男性患者さんがいらっしゃいます。奥さまが「歯の管理が大変」ということで来院されるようになったのですが、実はこの患者さんはアルツハイマー型認知症になるまで歯科医院をほとんど受診されていなかった方でした。
今はお2人で月に1回必ずクリーニングにいらっしゃいますが、本音を言えば、こうなる前に今のようなペースで通われていたら、もしかするとアルツハイマー型認知症の発症は避けられていたかもしれない、とも思うのです。口腔内細菌の数は100億を超えるという説もあり、肛門にいる細菌の数よりも多いといわれていますが、歯のケアが良くない方の場合、その数が何と1兆を超えるそうですから……。
日本人の男性も女性も平均寿命が90歳に近づいた昨今、仕事や趣味、家族や友達との時間を長く楽しめるように、今から真剣に口腔内のケアを考えられてはいかがでしょうか。
(北沢伊/斉藤歯科医院院長 構成=小澤美佳)