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認知症の専門医「母親が認知症になった時にどうした、どうなった」

認知症の根治薬は、いつできるのか

 2013年は厚労省にとってショッキングな年だった。それまで認知症有病者数を200万人台と推定していたのに、朝田隆医師(当時筑波大学教授)の全国的な実態調査によって、2010年で439万人、2012年で462万人と算出されたのである。それまでの推計の約2倍だ。この研究報告から算出すると、2025年には700万人を軽く突破するとあって、認知症はまたたく間に社会問題となった。

朝起きたら、横にいる夫が突然死んでいた日の話

 この衝撃によって、その後の認知症を取り巻く環境はどう変わったのか。認知症専門医であり、母親も認知症だったという東京都立松沢病院院長の齋藤正彦医師に、認知症医療の現状から母親の認知症や認知症への対処の仕方などをうかがった。インタビュアーは、話題の本『ゆかいな認知症』の著者の奥野修司さん。

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 ── 認知症の現状について聞かせてください(奥野氏、以下同)。

 朝田先生の論文で大事なことは、50代60代の認知症が増えていなくて、増えているのは80代90代の人だということです。つまり超高齢者の死亡率が下がって長生きするようになったということ。人間の体には耐用年数というのがあります。

 耐用年数が過ぎればがんや心疾患などで死んだのに、治療がすすんで死ななくなったわけです。脳も同じように耐用年数が過ぎれば、認知症のようなことが起こって当然なわけだから、80代90代の人の認知症を病気というのはおかしいのです。

 ――認知症になるのはアミロイドβというたんぱく質だという説があります。どのあたりまで解明が進んでいますか? 
 アミロイド仮説ですね。要は、脳の神経の周りにアミロイドβというタンパク質が増えて、それが一定量を超えると神経細胞が死んでアルツハイマー病になるという仮説です。なぜ仮説かというと、細胞の間にアミロイドが増えていく様子を見た人がいないから。アルツハイマーで亡くなった方を解剖したら、脳にアミロイドβが沈着していたので、これが引き金だろうと考えたんですね。

 ところが、過去30年間、アミロイドβを分解する薬を作ろうと世界中が躍起になりましたが、治験をしてみるとみんな失敗しています。

 おそらく不老長寿の薬でも作らない限り難しいでしょうね。今後10年ぐらいのスパンでいえば、高齢者の認知症の根治薬は出ないと思います。

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