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在宅で認知症を診療するメリット

年を取るにつれて、さまざまな病気にかかりやすくなりがちです。その中でも、認知症は高齢化と切っても切れない関係にあります。厚生労働省が2015年に策定(2017年に改訂)した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」によると、2025年には65歳以上の5人に1人、全国で約700万人が認知症になると推計され、認知症の人がより良く暮らしていける社会づくりが模索されています。その答えの1つとして、訪問診療から見た認知症について考えます。【医療法人社団ときわ大宮在宅クリニック院長・清水章弘/メディカルノートNEWS & JOURNAL】

◇認知症? 病院嫌いで受診を拒否する男性

78歳の男性Aさんは若いころから病院嫌い。70歳を過ぎたころから少しずつ記憶力が低下し始め、それから年齢を重ねるごとに幻覚や徘徊(はいかい)といった症状も見られるようになりました。年齢的にも認知症を疑った家族が病院に連れて行こうとするのですが、なかなか聞き入れてもらえませんでした。家族が地域の介護センターに相談した際に紹介されたことがきっかけで、訪問診療を開始することになりました。

◇病気も症状もさまざまな「認知症」

「認知症」というと「アルツハイマー病」を思い浮かべる人が多いでしょうが、ほかにも「血管性」「レビー小体型」「前頭側頭型」があり、症状もさまざまです。また、ほかの病気によって認知機能の低下を来すこともあり、一見認知症のような症状がみられても、背景に別の病気が潜んでいることもあります。それらの鑑別のためにも、1度は頭部MRIなどの検査を実施することが望ましいです。特に急速に記憶力が低下したり今までできていたことができなくなったりしたなどがあれば、早めに精密検査を受けるようお勧めします。

前述のように、認知症の症状はさまざまで、Aさんのように幻覚や徘徊といった目立つ症状が出る方もいれば、逆に元気がなくなり家に閉じこもってしまうような方もいます。それぞれの症状に合わせて、薬や接し方、どのような介護サービスを使用していくかなどを考える必要があります。そのためには患者さんとしっかり話をして、どのように生活をしているかを把握する必要があるのです。

ところが、Aさんのように病院に行きたがらない方だと、今までは家族が病院に受診し、薬だけもらってくるという“治療”をすることもよくありました。そうすると、実は薬があまり合っていなくて、症状が悪化してしまうということもあり得ます。また、患者さんと接して病状や生活状況などを把握しないと、適切な治療や介護サービスの提案もできません。

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