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前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)を専門医が解説。家族へのアドバイスも
4大認知症のひとつ、前頭側頭型認知症について筑波大学の新井哲明教授に詳しく解説してもらいました。かつては「ピック病」と呼ばれていましたが、現在は「前頭側頭葉変性症」という症候群として捉えられ、その中で前頭側頭型認知症、意味性認知症、進行性非流暢(りゅうちょう)性失語という三つのタイプに分かれます。「脳の後方が侵されるアルツハイマー型認知症と異なり、前頭側頭葉変性症は脳の前方が侵されるため、人格や行動が変化してしまう」と新井教授は話します。
・特徴
・原因
・3タイプそれぞれの発症率
・間違えられる症状
・治療
・家族の対応
・ご家族へのアドバイス【特徴】
万引きなど反社会的な行動をとることも
前頭側頭葉変性症は、脳の前方にある前頭葉と側頭葉が萎縮することによって引き起こされる認知症です。前頭葉は理性をつかさどり、人を人たらしめている部分です。ここが侵されるために抑制が利かなくなり、スーパーで目についたものを万引きしてしまうなどの反社会的な行動が表れることがあります。そこまでいかなくとも、診察中に鼻歌を歌ったり、突然部屋を出て行ってしまったりするなどの行動はよく見られます。このような症状は「going my way behavior(我が道を行く行動)」と呼ばれています。ほかに、意味もなく照明をつけたり消したりするなど、同じ動作を繰り返す「常同行動」といった症状もあります。【原因】
最近見つかった異常なたんぱく質が脳にたまる
前頭側頭葉変性症は、脳の神経細胞に異常なたんぱく質がたまることが原因で前頭葉と側頭葉が萎縮します。1892年にアーノルド・ピックが第1例を報告しました。たんぱく質の蓄積によって引き起こされる認知症は、アルツハイマー型認知症をはじめ30以上ありますが、前頭側頭葉変性症で見られるたんぱく質の9割が「タウ」か「TDP-43」のいずれかです。大体半々くらいの割合です。TDP-43が見つかったのは比較的最近のことで、2006年です。それまでは、タウによって作られる「ピック球」という物質が見られることがあったため、ピック病と言われていました。現在はタウとTDP-43のどちらを原因とする場合も前頭側頭葉変性症と呼んでいます。
TDP-43は筋肉が衰え、やがて自発呼吸ができなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の原因でもあります。TDP-43が脊髄(せきずい)にたまるとALS、脳にたまると前頭側頭葉変性症になります。脊髄と脳の両方にたまることもあり、前頭側頭葉変性症患者の5~10%がALSを合併します。なぜタウやTDP-43がたまるのか。残念ながら原因は分かっていません。1/4ページ