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認知症支援 地域ぐるみで/サポーター5000人を突破

青森県五所川原市が、認知症の当事者や家族を地域ぐるみで支援しようと「認知症サポーター」の育成に力を入れている。企業や学校などが実施する養成講座を受講した市民が2018年に5千人を突破し、人口当たりのサポーターなどの数は県内10市で2位。ボランティアの精力的な活動ぶりも光っている。

 「認知症の人の言動を頭ごなしに否定せず、まずは受け止める。その上で、家事の手伝いを頼むなど、家族の一員としての役割を担ってもらうことが大切」

 市役所で25日に開かれた講座で、講師役のボランティア「キャラバン・メイト」の和島まゆみさん(53)がそう強調した。阿部寿美子さん(59)と今千秋さん(54)は津軽弁を交えて、認知症をテーマにした寸劇をユーモアたっぷりに熱演した。

 この日は市幹部ら13人が受講。一戸治孝副市長は終了後、「いつかは自分が認知症になるかもしれない-という思いを忘れず、市として地域ぐるみのサポート体制をつくっていく必要がある」と語り、認知症サポーターの証しである「オレンジリング」を受け取った。

 講座は、市が要請に応じてキャラバン・メイトを派遣して開かれている。市が16年に行った「認知症の人をみんなで支え合うまちづくり宣言」をきっかけに、認知症に理解を深めようという機運が地域で高まったという。18年は企業や学校、町内会、老人クラブなど17カ所で開かれ、佐々木孝昌市長など計534人がサポーターになった。

 キャラバン・メイトは現在29人。和島さんら3人は高齢者施設に勤務する介護福祉士などの専門家で、認知症の人への接し方に始まり、加齢による物忘れと認知症の記憶障害との違いなど、実務経験に基づき分かりやすく説明している。

 和島さんには「正しい知識を広めることで認知症に対する偏見を解消したい」との思いがある。かつて受講した女性から「講座のおかげで家族の認知症を早期発見できた」と感謝された経験があるといい、一定の手応えを感じている。

 講座をきっかけに認知症に関心を深めた市民がキャラバン・メイトを志望するなどの好循環もあり、16年3月末は3838人だったサポーターは、18年12月末には5299人まで増えた。サポーターとキャラバン・メイトが総人口に占める割合は9.25%(18年9月末時点)で、県内10市では十和田市の14.39%(同)に次ぐ高水準になった。

 市地域包括支援センターの木村淑子所長は、サポーター増加の背景を「高齢化が進み、認知症の人に接する機会が増えたため、企業などには対応力が求められるようになった」と説明した上で「講座を単なる知識取得の場で終わらせず、地域でサポーター間の横の連携をつくっていくなど、サポーターの数よりも質を高める取り組みも必要になる」と今後を展望する。

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認知症サポーター 認知症に関する正しい知識を持ち、当事者や家族を支援できる人を養成しようと、厚生労働省が2005年に始めた。講師のボランティア「キャラバン・メイト」が学校、企業などで60~90分程度の養成講座を開く。年齢制限はなく、未成年でもサポーターになれる。青森県のサポーター数は18年9月末時点で9万1365人。