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「サルコペニア」や「フレイル」を予防! 今日から始める正しい筋トレ

「人生100年時代」に突入した現代、人生後半の健康維持が課題です。自由に動ける体でいるためには筋肉が大事。今から鍛えておきましょう(構成=渡部真里代 取材・文=鈴木裕子 イラスト=おおの麻里) 【図解】初心者に最適! 「自重トレ」&食事のコツ * * * * * * * ◆将来、要介護となるか否かは50代が分かれ道に いつまでも健康で自立した生活を送るために、大きな鍵を握るのが筋肉です。しかし、「年齢とともに筋肉の量が減少する」と指摘するのは、トレーナーの比嘉一雄さん。 「筋肉は、『筋線維』という線維状の細長い細胞からできています。けれど、加齢により成長ホルモンの分泌が減少すると、筋線維の1本1本が細くなるうえに、数も徐々に減少。筋肉量は30歳をピークに年1%ずつ減り続け、50歳からは年2%減に加速。80歳の時点でピーク時の約半分の量になると言われているのです」(比嘉さん。以下同) ※「初心者に最適! 「自重トレ」&食事のコツ」はこちら 最近、耳にすることが多くなった「サルコペニア」という言葉は、加齢によって筋肉量が低下した状態を指します。そのまま放っておくと、歩く、立ち上がるなどの動作がスムーズにできなくなる「ロコモティブシンドローム」や、心身ともに虚弱状態になる「フレイル」に陥る恐れも。「しかし、ご安心を」と比嘉さん。 「筋線維の本数は増やせませんが、太くすることは何歳になっても可能です。筋トレをしている96歳の人の筋肉量がアップしたという研究報告もあるほど。年齢にかかわらず効果は期待できますが、筋肉量の減少が加速する50代から始めたほうが、効率よく増やすことができるでしょう」

●筋肉量はこうして増える!「超回復」能力

◆休むことで育つ筋肉の「超回復」を活用 無理なく続けられ、効率的に筋肉量を増やすには、自分の体重を利用して行う「自重トレーニング」がおすすめだそう。 「器具を使わず、体に無理な力をかけないので、ケガの心配が少ないです。大切なのは、ひとつの動作をゆっくり行うこと。筋肉が収縮して静脈が圧迫されると血流が制限され、筋肉の内部が酸欠状態になります。すると、成長ホルモンの分泌が促され、筋肉が成長するのです。ただし、現状の筋肉の能力より大きな負荷でないと効果はありません。回数は少なくていいので、『きつい!』と感じるまで負荷をかけましょう」 同じ部位のトレーニングは、週2回程度が効果的だとか。 「筋トレなどの運動をすると、刺激を受けて筋線維が傷つき、その後、48~72時間かけて修復します。この時に、筋線維が以前よりも強く、太く修復される。これが、『超回復』と呼ばれる筋肉の特性。十分な休憩をとったほうが、効率よく筋肉を増やせるのです」 超回復には休息に加え、栄養を十分に摂ることも必要になります。 「筋肉の材料となるタンパク質は、意識してたっぷり摂るといいでしょう。また炭水化物(糖質)は、体を動かすエネルギー源となるため、不足すると、筋肉のタンパク質を分解してエネルギーをつくることになり、筋トレをしているのに筋肉量が減ってしまうことも。加えて、ビタミンやミネラルは、エネルギーが円滑に使用できるように環境を整えてくれます。食事やサプリメントできちんと補給しましょう」 筋肉量が増えると、日常の動作がスムーズになるだけでなく、基礎代謝も上がり、脂肪燃焼や血行の改善も期待できます。 「そのほか、筋肉を刺激することで、骨の生成が促され骨が強化されるという効果も。筋トレをすると脳の神経伝達物質である『BDNF』が分泌され、それによって記憶に深く関わる『海馬』で神経細胞が増えることが、近年の研究で明らかになっています」 次ページから、初心者でもすぐに始められる筋トレと、筋肉づくりに欠かせない栄養素を紹介します。 無理なく、効率よく、筋肉を増やすには10分程度のトレーニングを週2回がベスト

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