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脳梗塞を疑うポイントは3つ 1つでも突然起こればすぐ救急車を
脳梗塞は、脳の血管が何らかの原因で詰まってその先に血液が届かなくなり、脳細胞が酸素などの不足で死んでしまう病気だ。歌手の西城秀樹さん(故人)がかかった病気としても知られる。今は治療技術が進化し、適切な対応が取れれば命が助かるばかりか、社会復帰もスムーズにいく。知っておくべきことを専門医に聞いた。
「脳梗塞は治療が遅れれば、命を落としたり、後遺症が残る可能性が高くなります。少しでも早い治療が必要です」
こう言うのは、聖マリアンナ医科大学東横病院副院長で、同病院脳卒中センター長の植田敏浩医師だ。ところが実際は、「しばらく様子を見てから病院に来た」という人が多く、「あと少し早く来ていれば」と悔やまれるケースが珍しくないという。
脳梗塞かも、と疑うべきポイントは主に3つある。まず1つ目は、どちらか片方の手が使いづらくなる。しびれたような感覚があり、力が入らず、お箸やお茶碗を落としてしまう。ボタンをうまく留められなくなる、などだ。
2つ目は、ろれつが回らなくなり、言葉が不明瞭になる。言いたいことが言えなくなる。
そして3つ目は、顔面の片方に麻痺が起こる。3つのうち1つでも突然起こったら、要注意だ。「突然」というのは、「昨夜寝るまでは何ともなかったのに、起きたら3つのうちどれかがあった」というケースも含む。すぐに救急車を呼ぶべきだ。
「心筋梗塞なら胸の痛みがあるので、たいていの人はすぐに救急車を呼びます。しかし、脳梗塞は痛みがありません。だから、『もう少しすれば治るだろう』と考えてしまいがち。高齢者では、救急車を呼ぶのに抵抗を覚えがちなのもあるでしょう。しかし、1分1秒でも早く病院に行かなければならない、緊急性のある状況なのです」(植田医師=以下同)
■痛みなし、症状がすぐ消える…それでも油断禁物
場合によっては、「片方の手が使いづらくなる」「ろれつが回らなくなる」「顔面の麻痺」といった症状が、数分間で消えることがある。
しかし、これも脳梗塞が疑われる。脳の血管に詰まった血栓(血の塊)が小さく、いったん脳血管が詰まっても、その後、血栓が流れて血管の詰まりが解消されるため、すぐに症状が治るのだ。
「しかし、本格的な脳梗塞を起こす前触れです。早ければ数日から1週間以内に脳梗塞を起こすかもしれない。やはりすぐに病院を受診してください。何が原因で血管が詰まったのかを調べ、それに応じた薬物療法を行います」
脳梗塞には、3つのタイプがある。心臓にできた血栓がポンと脳に飛んで脳の太い血管が詰まる「心原性脳梗塞」、脳の太い血管が動脈硬化を起こして細くなったり詰まったりする「アテローム血栓性脳梗塞」、脳の細い血管が詰まる「ラクナ脳梗塞」だ。
心原性脳梗塞は心房細動などの不整脈が原因で、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ脳梗塞は動脈硬化と関係がある。
「動脈硬化を起こす高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などに該当する人は脳梗塞のリスクが高いですが、それらがなくても、脳梗塞を起こすことがあります。20代など若くても例外ではありません。脳梗塞を疑うべき3つの症状が1つでも突然生じたら、年齢や生活習慣病の有無に関係なく、すぐに救急車を呼ぶべきです」
病院選びも、脳梗塞の予後をよくする重要なポイントだ。現在、脳梗塞の有効な治療法として「血栓回収療法」が注目されている。2010年に国内で行われるようになって以来、この治療が受けられる医療機関は徐々に増えているものの、「24時間365日OK」となると非常に限られる。