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3月12日は「世界腎臓デー」慢性腎臓病(CKD)対策の重要性
3月の第2木曜日(2020年は12日)は、増え続ける腎臓病を防ぐ目的で「世界腎臓デー」と定められている。現在、日本全国で透析治療を受ける患者数はおよそ33万人を数え、年間で新たに透析治療を始める患者数は約4万人、そして約3万2000人の患者が亡くなっているという。また、日本で透析治療にかかる医療費は年間約1兆5千億円に上り、これは総医療費の約4%と大きな割合を占めている。世界的に見ると人口100万人あたりの透析患者数は台湾に次いで2位だという日本。こうした現状を踏まえ、日本腎臓病協会と協和キリンが2月18日に行った「慢性腎臓病(CKD)プレスセミナー」から要点をまとめた。
CFDの定義とは…
NPO法人日本腎臓病協会理事長で川崎医科大学副学長腎臓・高血圧内科学主任教授の柏原直樹先生は、CKDについて「血清クレアチニン値から計算した推定GFR(腎臓の機能を示す)が60ml未満、あるいはタンパク尿が出ているだけでもCKDと呼ぶようになった。CKDは遠い将来に腎不全に陥るだけではなく、脳卒中や心筋梗塞、最近では認知症のリスクがあることも分かってきている」と語る。実際に心血管死亡へのCKDの影響は糖尿病や喫煙より大きいとのデータもあり、日本人の中で約1200万人、成人した人のおよそ10%強がCKDの疑いがあるのだという。埼玉医科大学腎臓内科教授の岡田浩一先生は、改めてCKDの定義を「尿や血液、画像診断といった腎臓疾患の検査で何らかの異常がある。そしてGFRという腎機能の指標が60mlを下回った状態。いずれかが3カ月以上持続した場合、慢性腎臓病ということになる。特に検査の中では、検尿におけるタンパク尿の陽性が異常値の中でも最も重要」と強調し、なぜタンパク尿の異常が重要なのかというと「検診時をゼロポイントとして、何らかのタンパク尿の所見が出た人が10~15年経過すると、将来的に末期腎不全に到達する可能性が高くなる」と解説する。また、中年・壮年期においてGFRが60mlを下回っている人は、平均余命の間に腎機能が廃絶してしまう可能性にも言及した。
ところが、CKDの認知度は決して高いとは言えず、20~50代の一般消費者(1727人)を対象としたあるWEB調査では「『慢性腎臓病』という言葉を知っているかという質問には約50%が知っているという回答だったが、20代の若年層になるほど認知度が低いという結果が出ている」と岡田先生。また、健康診断の尿タンパクがCKDとつながりが深いことは認知されているが、血清クレアチニンやeGFRが関わっているとの認識は低く、そもそも「分からない」という回答も多かった。さらに、健診での異常を放置すると将来的に心血管系合併症のリスクがあるということの認知度も低かったのだとか。こうした調査から「若年層や健康意識の低い集団に対して効率的な情報発信によるCKDの啓発が早期発見・早期治療に重要」と結論づけた。1/2ページ