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胃がん 少しでも早く「切る」ことが寿命やQOLに好影響

人間ドックだけでなく、自治体の定期検診でも受けられるようになってきた、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)。バリウム検査よりも精度が高いと医師は口を揃えて言うが、胃がんが見つかった場合は「切る」が優先される。

 マールクリニック横須賀院長の水野靖大医師は手術の優位性を強調する。

「化学療法や放射線治療と比べて、手術の最大の強みはがんをすべて取り切れることです。根治性を考慮すれば、手術が最適の治療法です。とくに胃がんは、どんな小さながんでも様子見することなく、できるだけ早く切ったほうが寿命やQOL(生活の質)に好影響を与えます」

 胃がんは日本人男性に多いがんだが、近年は患者の負担を減らす手術が取り入れられている。

「胃はたとえ3分の1でも切除すると手術による体への負担があるだけでなく、術後もQOLが下がることがある。最近は患部のみを内視鏡のナイフの先端で切り取る『内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)』が主流で、患者の体にかける負担やQOLの低下をできる限り抑えられます。

 ただし、この手術は装置の大きさの都合上、2cm程度までしか取り除けないため、定期的に検査を受けて早期発見を目指すことが望ましい」(水野医師)

 腹部をメスで切り開いて胃を切除する場合には、QOLが低下するリスクが出てくる。

「胃の下のほうを切除すると、幽門と呼ばれる胃の出口にあり食べ物が腸に流れ出るのを制御する部分がなくなるので食事に対する制限が出ることがあります。それでも、胃がんは早期に手術すれば根治が見込めるため、『切る』ことを優先するケースが多い」(水野医師)

 胃がんはステージ1で手術した場合の5年生存率はほぼ100%近いが、手術をしない場合には60%台まで下がるというデータもある。

※週刊ポスト2020年3月13日号