介護・医療関連ニュース
-
骨密度だけではなく「骨質」に注目!骨の糖化と酸化ストレスは骨折リスクを高める
「骨の強さは、骨密度だけではなく“骨質”が大切!」とアラートするのは、東京慈恵会医科大学 整形外科学講座准教授・診療部長の斎藤 充さんだ。
現在、骨粗しょう症の診断は、骨の中のカルシウムなどのミネラル量を測定する骨密度で行われている。しかし「もちろん骨密度は重要ですが、実は骨の強さはそれだけではなく“骨の質”、つまり体積でいうと約50%を占める骨内のコラーゲンの質も関係していることが明らかになっています」と斎藤先生は話す。
コラーゲン分子をつなぐ架橋が、糖化や酸化ストレスにさらされて悪玉化したものが悪玉架橋。その本体は、一般的に「後期糖化・酸化生成物=AGEs」という物質で、タンパク質の糖化反応(メイラード反応)によってつくられる生成物だ。
「骨コラーゲンの代表的なAGEsは“ペントシジン”という物質です。また、酸化ストレスを受けると、血液中の“ホモシステイン”という物質の濃度が高くなります」
特に日本人は遺伝的にホモシステインが高くなる体質の人が多いそうなので、要注意だ。
●ペントシジン…酸化や糖化で劣化した悪玉架橋の主成分。糖尿病や高血圧などの生活習慣病のある人に生じやすい。健康な人でも加齢などで増えていく。
●ホモシステイン…食事からとったタンパク質が代謝される過程で生じる物質で、体内に過剰に増えると活性酸素を発生し、コラーゲン架橋を悪玉に変える。
これらの物質が骨質を知る指標になると、斎藤先生たちの研究グループが発表した。欧米や日本でも大規模な研究がされた結果、骨粗しょう症は3つのタイプに分けられること、そして、これらが「骨密度も骨質もよい人」と比べて骨折リスクがどれほど上がるかを割り出した。
1.低骨密度型(骨折リスク3.6倍)。
2.骨質劣化型(骨折リスク1.5倍)。
3.低骨密度+骨質劣化型(骨折リスク7.2倍)。
(閉経後の日本人女性502人を対象に、骨粗しょう症を3タイプに分け、骨密度も骨質もよい人に比べての骨折リスクを検証)
「この結果からわかる通り、低骨密度型と骨質劣化型のダブルパンチになると、骨折リスクが非常に高まることが判明しました。しかもその比率は、1.:2.:3.が、5:3:2となり、骨質劣化型が決して珍しいものではないことも明らかになりました」と斎藤先生。
「骨質」の劣化は、尿中の“ペントシジン値”や、血液中の“ホモシステイン値”が指標になる。これらの検査は、現在は骨粗しょう症に対しては保険適用外だが、近い将来、一般的になりそうとのことだ。
構成・原文/山村浩子