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【デキる人の健康学】地中海食の効能は短鎖脂肪酸か 伝統的な日本食も(産経新聞)

これまでの栄養学研究で地中海式ダイエットは生活習慣を予防する健康的な食事法と報告されている。また、最新の研究でも認知症予防効果があることを本コラムでも紹介した。しかし、どの食材にその健康効果があるのかに関してはオリーブ油であるとする説、地中海地方で取れる野菜や果物であるとする説、あるいは新鮮な魚介類にあるとする説など諸説あり未だにはっきりしていない。そんな中、地中海食に豊富にふくまれている食物繊維が腸内細菌により発酵されて生成される短鎖脂肪酸にその健康効果があるとの報告が話題を呼んでいる。

 イタリアのナポリ大学微生物学科のダニロ・エルコリ二教授らの研究チームは腸内フローラが生成する短鎖脂肪酸に注目した。酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸は食事中の不溶性食物繊維が腸内細菌により発酵される過程で生成される代謝産物であるが、最新の研究ではその抗酸化作用や抗老化効果が注目され、炎症性疾患や糖尿病、心血管疾患を予防する効果があることが分かった。

 研究チームはイタリアの離れた4つの町の成人153名の1週間の日常の食事内容と腸内細菌、および便中の短鎖脂肪酸の濃度の関連性を検討した。

 その結果、果物、野菜や豆類など植物性食品の摂取量が多い人の腸内にはプレボテーラとラクノスピラという細菌が検出されたが、これらの菌が腸内で食物繊維を分解し短鎖脂肪酸を生成し健康効果に繋がっていると考えられた。

 一方で動物性タンパク質の摂取が多い人では、ルミノコッカスという細菌が検出された。ルミノコッカスは動物性蛋白質由来のカルニチンやコリンを分解するが、その代謝産物は心疾患の要因になると報告されている。伝統的な日本食も野菜や豆類が豊富なので、同様の腸内フローラと短鎖脂肪酸の生成が期待されるだろう。

■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。