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口のケアが後遺症防ぐ 脳卒中と身体機能 「歯の長寿学」(269)

 脳卒中とは、急激に発症する脳血管障害のことです。大きくは脳の血管がつまる「脳梗塞」と脳の血管が破れて出血する「脳出血」に分けられます。原因はさまざまですが、主に高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の結果、生じます。

 脳卒中による直接的な口腔(こうくう)への影響として、口の中にある食物が認知できず、口の中に残留する。頬粘膜や口唇をかんでしまう。味覚障害や唾液分泌障害、摂食・嚥下(えんげ)障害、発音が正しくできない構音障害などがあります。

 脳卒中はさまざまな障害をもたらします。それにより、間接的に口腔への影響があり、口腔内環境の悪化につながる場合があります。

 上肢や下肢に障害が残った場合、自力での口腔清掃が困難になり、放置してしまうと口腔衛生状態が悪化し、むし歯や歯周病が進行します。通院困難になると、口腔内を放置することにもなります。

 上肢障害や口腔内の感覚障害などが伴うと、口腔内環境が悪化して口腔内細菌が増加し、増加した細菌を誤嚥(ごえん)する事で誤嚥性肺炎のリスクが高まります。

 高次脳機能障害には、認知症や失語症、記憶障害や遂行機能障害などがあります。視界に入っていても脳が認識しなくなる「半側空間無視」では、口腔内の半側の清掃ができないことがあります。

 摂食・嚥下機能が低下すると、経口摂取をしていなかったり、意識状態が不良で発語がないことが続くと口腔周囲器官が使用されず、廃用症候群(動かなくなる、動かせなくなる)に陥ることがあります。摂食・嚥下に関わる器官は、口腔以外にも大脳や延髄、咽頭、食道と多部位にわたり、どこが障害されても摂食・嚥下障害になります。

 生活習慣の改善が脳卒中、脳卒中後遺症の予防になります。それと口腔ケア、プラークコントロールも重要です。そのためにも医科・歯科両方の定期健診を欠かさないことが大事です。(ティダの杜歯科 長嶺忍)