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【デキる人の健康学】狩猟民族に不眠症はいない 文明社会がもたらした病気(産経新聞)
現代社会の夜は昔に比べて明るく、コーヒーなど睡眠を妨げる嗜好品があり、スマホや深夜番組など夜更かしの誘惑に満ち溢れている。
多くの現代人がそのために不眠症で悩み、睡眠を確保するために睡眠薬に頼っているのが現状だ。それでは現代文明とは無縁の生活を送る狩猟民族では良質の睡眠が確保されているのだろうか?
米国カリフォルニア州立大学ロサンジェルス校精神行動科学科のジェローム・シーゲル博士らの研究チームは伝統的な狩猟生活を送っているタンザニアのハッザ族、ナミビアのサン族、ボリビアのツイマネ族の3部族を対象に合計94名、延べ1165日分の睡眠と日常活動をアクティウオッチという腕時計型の生活活動計で記録し、その睡眠パターンをコンピューターで解析し工業化社会に住む人のパターンと比較した。
その結果、意外にも狩猟民族の平均睡眠時間は6.5時間以下と工業化社会に住む人の平均睡眠時間より短く、定期的な昼寝はしていないことが分かった。
3部族ともに電灯は持っていなかったが日没後も平均3.3時間起きていて、夜明け前に起床するという共通点が明らかとなった。
解析の結果、睡眠時間に影響を与える最大の環境因子は気温で冬の睡眠時間は夏に比べて平均1時間程度も長いことが分かった。
興味深いことに狩猟民族の中には慢性の不眠症で悩む人がほとんど見当たらず、「不眠症」という単語自体が存在しなかった。シーゲル博士は現代人に蔓延した不眠症は文明社会がもたらした病気であることの確証が得られたと主張する。
不眠症の根本的な解決は睡眠薬ではなく文明社会が生み出した様々な睡眠を妨げる生活習慣を取り除いて原始的な生活環境に戻ることなのかも知れない。
■白澤卓二(しらさわ・たくじ) 1958年神奈川県生まれ。1982年千葉大学医学部卒業後、呼吸器内科に入局。1990年同大大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。1990年より2007年まで東京都老人総合研究所病理部門研究員、同神経生理部門室長、分子老化研究グループリーダー、老化ゲノムバイオマーカー研究チームリーダー。2007年より2015年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。2015年より白澤抗加齢医学研究所所長。日本テレビ系「世界一受けたい授業」など多数の番組に出演中。著書は「100歳までボケない101の方法」など300冊を超える。